業界研究
コンサル転職でのホットトピック|生成AIの実装・定着化|「業務フローへの組み込み」「ガバナンス構築」「RAG(検索拡張生成)などの具体的開発」
サマリー
PoCの終わりと「実装の時代」の幕開け
2024年から2025年にかけて、コンサルティング業界はかつてない大きな変化の中にあります。その中心にあるのは、やはり「生成AI(Generative AI)」です。しかし、2023年頃までのように「とりあえずAIで何ができるか試してみよう」というPoC(概念実証)のフェーズは、すでに過去のものとなりました。今、クライアント企業が求めているのは、AIを実験室から出し、実際の「業務フロー」に組み込んで、確実に利益を生み出す「実装」と「定着化」です。
この変化は、これからコンサルタントを目指す方、あるいはキャリアアップを考えている方にとって非常に重要な意味を持ちます。単にAIの知識があるだけでは十分ではありません。求められているのは、AIを安全に運用するための「ガバナンス」を構築し、自社のデータに基づいた正確な回答を生成する「RAG」などのシステムを具体的に開発・導入できるスキルです。
市場では、生成AIへの投資から実際に収益を得ている「成功企業」と、導入に足踏みしている企業の差が開き始めています。このギャップを埋めることこそが、これからのコンサルタントの最大の使命であり、ビジネスチャンスでもあります。本記事では、未経験からでも知っておくべき最新のトレンドや、企業が求めている具体的なスキル、そして気になる年収やキャリアパスについて、最新情報を交えて解説します。
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ROIの絶対性 — 「インパクト・ギャップ」を超える戦略
「お試し期間」の終了とスピード感
現在、コンサルティングの現場で最も重視されているのは「Time-to-Value(価値創出までの時間)」です。以前のように数年がかりのDX計画を立てるのではなく、半年以内に成果を出すスピード感が求められています。実際に、多くの先進的な組織では、生成AIのアイデアを出してから6ヶ月以内に本番環境へ移行させています。
コンサルタントには、アジャイルな手法で素早く開発を進め、ユーザーからのフィードバックを受けて改善を繰り返す姿勢が必要です。そして何より重要なのは、その投資がどれだけの利益(ROI)を生んでいるかを証明することです。AI導入に成功している企業の多くは、すでに年間売上の数パーセントに相当する収益増加を見込んでいます。
一方で、経営層がAIを最優先課題としているにもかかわらず、現場ではなかなか成果が出ないという「インパクト・ギャップ」に悩む企業も少なくありません。これは、AIを単なるツールとして導入してしまい、業務プロセスそのものの変革(BPR)に踏み込めていないことが原因です。ここに、コンサルタントが介入し、課題解決を支援する大きな余地があります。
「リーダー企業」と「ラガード企業」の違い
転職活動において評価されるためには、うまくいっている企業(リーダー)とそうでない企業(ラガード)の違いを理解しておく必要があります。データを見ると、リーダー企業は「選択と集中」を徹底しています。あれもこれもと手を出すのではなく、本当に効果の大きい少数の業務領域(ユースケース)にリソースを集中させているのです。
これからコンサルタントを目指す方は、クライアントに対して「とりあえず全社員にアカウントを配りましょう」と提案するのではなく、「サプライチェーンの予測精度を上げて在庫コストを削減しましょう」といった、経営に直結する具体的な戦略を提案できるかどうかが問われます。
市場の拡大と新しい仕事
生成AI市場は急速に拡大しており、それに伴いコンサルティングファームへの依頼も増え続けています。大企業の支援だけでなく、スタートアップの成長支援や、投資ファンドによる企業価値向上のためのAI活用など、活躍のフィールドは広がっています。これまでの戦略コンサルやITコンサルの枠を超え、AIに特化した新しい職能が次々と生まれています。
業務フローへの組み込み — 現場で進む変革
チャットボットから「エージェント」へ
今、「実装」の現場で最も注目されているのが、AIを単なる話し相手(チャットボット)ではなく、自律的に作業をこなす「エージェント」として業務フローに組み込むことです。これを「エージェンティック・ワークフロー」と呼びます。
例えば、これまでのAIはメールの文面を考えるだけでしたが、エージェント型AIは「メールを作成し、顧客管理システムから情報を引き出して内容を調整し、上司の承認を得て送信する」といった一連の仕事を自律的に行います。コンサルタントには、どこまでをAIに任せ、どこで人間がチェックするかというプロセス全体を設計する力が求められます。
営業・マーケティングでの定着化
業務フローへの組み込みが特に進んでいるのが、マーケティングや営業の領域です。多くのマーケターや営業担当者がAIを活用し、1日あたり1時間以上の業務時間を削減しています。これにより、空いた時間をより創造的な戦略立案や、クライアントとの対話に充てることができるようになっています。
コンサルタントとしての役割は、個々の社員がバラバラにツールを使う状態から脱却し、組織全体でデータが活用される仕組みを作ることです。例えば、営業活動の記録が自動的にシステムに蓄積され、次の提案内容をAIがレコメンドしてくれるようなサイクルを構築することが、真の「定着化」支援となります。
バックオフィスの知見を可視化する
社内の問い合わせ対応などのバックオフィス業務でも、AIは大活躍しています。ある大手コンサルティングファームでは、社内ヘルプデスクにAIを導入し、問い合わせの9割を自動化することに成功しました。
ここで重要なのは、AIに答えさせるために、社内のマニュアルや規定を整理する必要があったという点です。AI導入は、実は社内に埋もれていた「暗黙知」を整理し、誰もが使える「形式知」に変えるナレッジマネジメントのプロジェクトでもあります。コンサルタントは、AI導入をきっかけに、古くなった業務ルールを刷新するチャンスだと提案することができます。
技術的フロンティア — RAG開発とエンジニアリング
なぜ今、RAG(検索拡張生成)なのか
AIを業務で使う際、「嘘をつく(ハルシネーション)」や「社内情報を知らない」という問題が壁になります。これを解決するのが「RAG(検索拡張生成)」という技術です。これは、ユーザーの質問に対して、まず社内のデータベースから正しい情報を検索し、その情報をAIに渡して回答を作らせる仕組みです。これにより、回答の根拠が明確になり、信頼性が飛躍的に向上します。
実際にRAGを導入した企業では、回答作成の時間が大幅に短縮され、顧客満足度も向上しています。コンサルタントにとっても、クライアントに安心してAIを使ってもらうための必須の提案事項となっています。
具体的開発のトレンド
「RAGを作りましょう」という提案だけでは、もはや差別化できません。現在は、より精度高く、より高速に回答するための技術的な工夫が求められています。
回答の高速化: 過去に似たような質問があった場合、AIに考えさせるのではなく、保存しておいた回答を即座に返す仕組み(キャッシュ)を導入し、スピードアップとコスト削減を図ります。
画像や音声の活用: テキストだけでなく、図面やグラフ、現場の音などをAIに理解させる「マルチモーダル」な活用が進んでいます。製造業の現場などで、故障音から原因を特定するといった使い方が可能になります。
データの自動整理: 社内に散らばったデータをAI自身に整理させ、検索しやすい形にするサービスも登場しています。
未経験でも知っておくべきこと
エンジニアでなくても、コンサルタントとして「どういう仕組みで動いているか」を理解しておくことは重要です。例えば、「ベクトルデータベース」や「プロンプトエンジニアリング」といった言葉の意味や役割を知っているだけで、エンジニアとの連携がスムーズになり、クライアントへの説明力も増します。求人においても、こうした技術への関心や学習意欲は高く評価されます。
ガバナンス構築 — イノベーションを守る防波堤
ルール作りがビジネスになる
AIが普及するにつれ、世界中で規制が厳しくなっています。EUでは包括的なAI規制法が成立し、日本でも国によるガイドラインが策定されました。企業は「便利だから使う」だけでなく、「安全に、法を守って使う」ことが義務付けられています。
この状況は、コンサルティングファームにとって大きなビジネスチャンスです。「AIガバナンス」の構築支援、つまりAIを使うための社内ルール作りや体制整備の案件が急増しています。
攻撃者視点で守る「レッドチーム」
セキュリティの分野では、「AIレッドチーム」という新しいサービスが注目されています。これは、専門家があえて悪意のあるハッカーになりきってAIを攻撃し、弱点を見つけ出すというものです。「爆弾の作り方を教えて」といった不適切な質問をしてガードを破ろうとしたり、機密情報を引き出そうとしたりするテストを行い、リリース前に安全性を確認します。
ガバナンスは「ブレーキ」ではなく「ハンドル」
面接などでアピールしたいのは、「ガバナンスはAIの利用を止めるためのブレーキではなく、安全に加速させるためのハンドルである」という視点です。しっかりとしたルールと監視体制があるからこそ、企業は安心してAIという強力なエンジンを全開にできます。リスクを管理し、透明性を確保することは、結果として現場での利用率向上にもつながります。
人材育成とキャリア戦略 — 誰が生き残るのか
ファーム内での学びと実践
コンサルティングファーム自身も、AIによる変革の真っ只中にあります。アクセンチュアやPwCなどの大手ファームでは、全社員に対して大規模な研修(リスキリング)を行っています。
特徴的なのは、「学びながら使う」というスタイルです。研修で学んだツールをすぐに自分の仕事(資料作成やリサーチ)使い、業務を効率化しながらスキルを定着させていきます。これにより、コンサルタントは空いた時間でより付加価値の高い戦略的な業務に集中できるようになります。
求められる職種と年収
AI関連の求人は非常に多く、売り手市場が続いています。
AIアーキテクト/エンジニア: AIのモデル選定やシステム構築を担います。高い技術力があれば、かなりの高年収が期待できます。
AIガバナンススペシャリスト: 法規制対応やリスク管理を担います。法務やコンプライアンスの経験がある方が重宝されます。
BPRコンサルタント: AIを前提とした業務改革を設計します。特定の業界知識とデジタルへの理解の両方が求められます。
未経験からの挑戦
「未経験でも大丈夫か」という相談は多いですが、完全に知識ゼロでは厳しいのが現状です。しかし、「エンジニア経験はあるがAIは未経験」「営業経験はあるがITは未経験」といった形であれば、十分にチャンスがあります。
特に強みになるのは、特定の業界に関する深い知識(ドメイン知識)です。例えば、製薬業界の商習慣や業務フローを熟知している人がAIを学べば、「創薬AIコンサルタント」として即戦力になれます。AIはあくまでツールであり、それをどう使うかを考えるためには、現場の業務を深く理解している必要があるからです。
結論:これからのキャリア戦略
今のトレンドから言えることは、生成AIはもはや「魔法」ではなく、使いこなすべき「道具」になったということです。これからコンサルタントに求められるのは、この道具を安全に(ガバナンス)、効率的に(業務フローへの組み込み)、そして正確に(RAG)使うための設計図を描く力です。
転職を考えている方へのアドバイスは以下の3点です。
全体の流れを見る: プロンプトを書く技術だけでなく、データの準備からAIの回答、そして人間による確認までの一連の流れ(システム)をイメージできるようにしましょう。
攻めのガバナンス: ルール作りを「面倒なこと」と捉えず、クライアントが安心して新しいことに挑戦するための「基盤作り」と捉えましょう。
まずは自分で使う: 入社前から、生成AIを使って自分の作業を効率化してみてください
自らAIを使って変わった経験が、クライアントを変えるための説得力になります。
生成AIの実装はまだ始まったばかりです。今この領域に飛び込むことは、将来の市場における先行者利益を得ることにつながります。変化を恐れず、新しい技術を楽しめる方にとって、これほど面白い仕事はないでしょう。
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参考URL
From Potential to Profit: Closing the AI Impact Gap | BCG
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●監修者
bloom株式会社 代表取締役 林 栄吾
慶應義塾大学を卒業後、株式会社ベイカレント・コンサルティングに入社。 事業戦略の策定・実行支援を中心としたコンサルティング業務に従事。
同社ではアカウントセールスマネージャーとして新規顧客開拓、メンバー育成を担う傍ら、採用責任者・人事責任者を歴任し、戦略コンサルティングと人事・採用の両面で豊富な実績を持つ。
独立後はbloom株式会社を設立。代表取締役として、コンサルティングと人事で培った知見を基に、不動産業および人材紹介業を統括している。