サマリー
不動産業界におけるキャリアアップの一つとして、「アセットマネジメント(AM)」が挙げられます。AMは単なる物件管理だけではなく、投資家の代理人として不動産という資産(アセット)の価値を最大化する、専門的な仕事です。
2024年から2025年にかけても、円安の背景もあり、オフィスやホテル、物流施設を中心に国内外から活発な資金が流入しており、AMの需要は高まり続けています。多くの企業が新たな投資案件やファンド組成を進める中で、優秀な人材の需要は尽きません。
AMのポジションは不動産と金融の知識が交差する領域であり、誰でも簡単になれるわけではありません。この記事では、AMへのキャリアアップの王道とされる「プロパティマネジメント(PM)からのステップアップ」と、もう一つの有力なルートである「金融業界からのキャリアチェンジ」という2つの道筋に焦点を当て、それぞれに必要なスキル、経験、転職戦略を解説することを目的としています。
不動産業界におけるキャリアアップ、アセットマネジメント(AM)とは
不動産業界でのキャリアを考える上で、多くの方が一つの頂点として目指す職種、それが「アセットマネジメント(AM)」です。不動産アセットマネジメントとは、単に物件を管理するのではなく、投資家の代理人として不動産という資産(アセット)の価値を最大化することをミッションとする、高度に専門的な仕事です。詳細は以下の記事をご確認ください。
🔗不動産アセットマネジメントとは?職種別の仕事内容、AM実務経験者監修 –
この不動産アセットマネジメントというポジションは、不動産と金融の知識が交差する領域であり、誰でも簡単になれるわけではありません。本記事では、サマリーにも記載しましたように、不動産業界におけるキャリアアップの王道ともいえる「プロパティマネジメント(PM)からのステップアップ」、そしてもう一つの有力なルートである「金融業界からのキャリアチェンジ」という2つの道筋に焦点を当てます。それぞれのキャリアパスで求められる具体的なスキル、経験、そして転職を成功させるための戦略を徹底的に解説します。この記事が、あなたのキャリアプランニングの一助となれば幸いです。以下記事もご参考にしてください。
🔗不動産アセットマネジメント未経験からの転職。不動産PMから不動産AMへの転職への親和性は高いのか –
「現場」のプロであるPM、「投資・判断」のプロであるAM:その決定的な違い
アセットマネジメント(AM)へのキャリアを考える第一歩は、しばしば混同されがちなプロパティマネジメント(PM)との違いを明確に理解することです。この二つの職種は、サッカーに例えるなら「キャプテン(PM)」と「監督(AM)」の関係にあります。つまり、監督(AM)の意思を受け継いで、実際にフィールドメンバーをまとめ上げて、自分の意思も加えて、実行していくのがキャプテン(PM)であるからです。どちらも不動産投資の成功に不可欠な役割ですが、その目的、業務範囲、そして求められる視点が根本的に異なります。
プロパティマネジメント(PM)の役割:現場の収益最大化を担う「現場監督」
プロパティマネジメントの主な目的は、担当する個別の不動産物件の運営管理を通じて、その収益を最大化することです。まさにフィールドの最前線で指揮を執る「キャプテン」であり、オーナーやAMの定めた方針に基づき、日々のオペレーションを遂行します。
具体的な業務内容は多岐にわたります。
- リーシングマネジメント(LM): テナントの募集、賃料交渉、契約更新といった、物件の稼働率と賃料収入を直接左右する業務。
- ビルディングマネジメント(BM): 建物の清掃、警備、設備点検、修繕計画の立案・実行など、物件の物理的な価値を維持・向上させるための管理業務。
- テナント対応: 入居者からの要望やクレームへの対応、満足度向上のための施策実施。
- 収支管理: 賃料の回収、管理コストの支払い、月次・年次の収支レポート作成など。
PMの仕事は、物件という「地」に足のついた、極めて実践的なものです。テナントや協力会社など、多くの関係者と日々接するため、高いコミュニケーション能力と調整力が求められます。
アセットマネジメント(AM)の役割:投資全体の価値最大化を担う「監督」
一方、アセットマネジメントの目的は、投資家から預かった資金(ファンド)全体の投資リターンを最大化することです。個別の物件を見るだけでなく、ポートフォリオ全体を俯瞰し、経済情勢や市場動向を踏まえた上で、最も合理的な投資戦略を立案・実行する「監督」の役割を担います。
AMの業務は、より戦略的かつ財務的な側面に重点が置かれます。
- 投資戦略の策定: どのような種類の不動産(オフィス、住宅、商業施設など)に、どのタイミングで、いくら投資するのかという大きな方針を投資家とすり合わせながら決定します。
- アクイジション(物件取得): 投資戦略に基づき、市場から優良な物件を探し出し、デューデリジェンス(詳細な調査、エンジニアリングレポートや不動産鑑定)を行い、価格交渉の末に取得します。
- 運用(期中管理): PM会社を選定・監督し、物件のバリューアップ(価値向上)施策を企画・実行します。大規模修繕やリノベーションの意思決定もAMの担当です。
- ディスポジション(物件売却): 投資価値が最大化されると判断したタイミングで、物件を売却し、投資利益を確定させます。
- 投資家対応: ファンドの運用状況を投資家へ定期的に報告し、説明責任を果たします。
- レンダー対応:資金を調達しているため、実際にDSCRやLTVなど金融機関から求められている条件を満たしているかを確認し、レンダーに適切に報告していきます
- 受託者対応:不動産ファンドでは信託受益権化された不動産のため、信託受託者が関係者に入ってきます。PMレポートを通して、所有者責任を信託受託者が果たせているかをチェックされたりします。
- 専門家との対応:弁護士とドキュメントのやりとり、会計士とBSやPLのやりとりをします。
AMは、PMから上がってくる現場のレポートを分析し、それを投資判断に繋げます。両者は単なる上下関係ではなく、AMの戦略的ビジョンとPMの現場実行力が一体となって初めて、不動産投資という事業が成功するのです。この密接な連携関係を理解することが、キャリアアップを目指す上で極めて重要になります。

AMへのキャリアパス:2つの王道ルートを徹底解説
不動産アセットマネジメントという専門職へ至る道は一つではありませんが、特に確立された2つの王道ルートが存在します。それが「プロパティマネジメント(PM)からのステップアップ」と「金融業界からのキャリアチェンジ」です。ここでは、それぞれのルートの強みと、乗り越えるべき課題について具体的に解説します。
Route 1: プロパティマネジメント(PM)からのステップアップ
これは、不動産業界内でキャリアを積み上げる最も一般的な道筋です。PMとして現場で培った経験は、AMの業務において計り知れない価値を持ちます。
なぜPM経験が強みになるのか
AMが扱うのは、あくまで「不動産」という物理的な資産です。そのため、机上の空論ではない、現実に根差した判断力が不可欠です。PM経験者は、この「現場感覚」という最大の武器を持っていますし、PMの気持ちを理解したAMが実務を行う上で求められるため、この経験は貴重なものになります。
- リアルな収支感覚: 日々の運営を通じて、実際の賃料相場、空室リスク、修繕コストなどを肌で理解しているため、AMが行うキャッシュフロー予測の精度を高めることができます。
- PM会社のマネジメント能力: 自身がPM業務を熟知しているため、委託先のPM会社に対して的確な指示を出し、モチベーションを管理しながらパフォーマンスを最大化させることが可能です。
- 説得力のある改善提案: テナントのニーズや建物の物理的な課題を深く理解しているからこそ、説得力のあるバリューアップ施策を立案できます。
特に、J-REIT(不動産投資信託)や私募ファンドが保有する物件のPM経験者は、投資家視点でのレポーティング業務などにも慣れているため、選考で高く評価される傾向にあります。
乗り越えるべき課題
PMからAMへの転職を目指す方が意識すべきは、視点の転換です。日々の運営管理というミクロな視点から、投資リターンやポートフォリオ戦略といったマクロな視点へと引き上げる必要があります。具体的には、PMとしての経験を、AMの言語、すなわち「投資の言葉」で語れるように自己変革することが求められます。また、判断をする立場になるため、投資家に対する説明責任を考える必要も出てきます。
Route 2: 金融業界からのキャリアチェンジ
もう一つの有力なルートが、投資銀行、証券会社、銀行、信託銀行といった金融業界からの転職です。不動産が「金融商品」として扱われる現代において、金融のプロフェッショナルに対するニーズは非常に高いです。
なぜ金融経験が強みになるのか
不動産AMの業務は、本質的には金融のロジックで動いています。金融業界出身者は、その中核となるスキルセットを既に有している点が大きな強みです。
- 高度な財務分析能力: 企業の財務諸表を読み解くスキルは、テナントの信用力評価や投資先の分析、収支の要因分析をする力に直結します。
- ファイナンス・モデリングスキル: Excelを駆使して精緻なキャッシュフローモデルを構築し、投資採算性を評価する能力は、特にアクイジション(物件取得)業務において必須のスキルです。企業買収で用いられるDCF法などの評価手法は、不動産価値評価にも共通して用いられます。
- 資本市場への理解: 金利動向や金融市場全体の流れを読み解く力は、資金調達や売却タイミングの判断に不可欠です。
アセットファイナンスや法人営業で財務分析の経験がある方、投資銀行でM&Aや資金調達に携わった経験がある方は、特に親和性が高いといえるでしょう。
乗り越えるべき課題
金融業界出身者にとっての課題は、不動産という「現物資産(アセット)」に対する固有の知識です。不動産特有の法規制、地域ごとのマーケット特性、建物の物理的なライフサイクルなど、金融商品とは異なるユニークなリスクや価値変動要因を学ぶ必要があります。
結局のところ、理想のアセットマネージャーは、PMの持つ「現場感覚」と金融のプロが持つ「投資分析能力」を兼ね備えたハイブリッドな人材です。不動産金融は、不動産、金融、会計、法務といった知識が求められます。どちらのルートから目指すにせよ、自分に不足している領域の知識やスキルを積極的に補っていく姿勢が、成功への鍵となります。
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不動産アセットマネジメントに必須のスキルセット一覧
不動産アセットマネジメントへの転職を成功させ、その後のキャリアで活躍するためには、専門的なテクニカルスキルと、業界を問わず通用するポータブルスキルの両方を高いレベルで備えていることが必須です。また、特定の資格を取得することは、自身の能力を客観的に証明し、キャリアを有利に進めるための強力な武器となります。特に不動産証券化マスターの資格はその証明となりますので以下記事をご参考ください。
専門的・テクニカルスキル
これらはAMの業務を遂行する上で土台となる、定量的な分析能力や専門知識です。
- 財務分析・モデリング能力: AMの仕事の中核をなすスキルです。特にExcelは上級レベルの習熟が求められます。膨大なデータを基に、物件の将来キャッシュフローを予測するモデルを構築し、IRR(内部収益率)やNOI(営業純利益)といった投資指標を算出する能力は不可欠です。様々なシナリオを想定したシミュレーションを行い、投資リスクを定量的に評価します。
- 不動産評価(バリュエーション)能力: DCF法(Discounted Cash Flow法)や直接還元法といった専門的な手法を用いて、不動産の適正な価値を算出するスキルです。この評価能力が、物件の取得価格や売却価格を決定する際の根幹となります。
- マーケット分析能力: 経済全体の動向、金利政策、地域ごとの人口動態、競合物件の需給バランスなど、多角的な情報を収集・分析し、不動産市場の将来を予測する力です。この分析に基づき、最適な投資戦略を立案します。
- 不動産力:物件についての法的な知識、リーシングの募集戦略、不動産業界の慣例・慣習の知識等。
- 関連法務・会計知識: 不動産取引に関連する法律(宅建業法、借地借家法など)や、不動産証券化、ファンド会計に関する知識は、デューデリジェンスや投資家へのレポーティング業務で必須となります。
ポータブルスキル
専門知識を実際のビジネス成果に結びつけるために必要な、対人能力や思考力です。
- 交渉・調整能力: 物件の売買交渉、レンダー(金融機関)との資金調達交渉、テナントとの賃料交渉、PM会社との管理委託契約交渉など、AMの業務は交渉の連続です。多様なステークホルダーの利害を調整し、最適な着地点を見出す高度な折衝能力が求められます。
- コミュニケーション能力: 複雑な投資スキームや運用状況を、投資家や金融機関に対して論理的かつ分かりやすく説明するプレゼンテーション能力が重要です。また、社内外のチームをまとめ、プロジェクトを円滑に推進するためのチームワークも不可欠です。
- 戦略的思考能力: 個別の物件の管理・運営という視点にとどまらず、ポートフォリオ全体を最適化し、長期的な視点で資産価値を最大化するための戦略を構想する力です。短期的な収益だけでなく、5年後、10年後を見据えた意思決定が求められます。
有利となる資格
下記の資格は、AMへの転職において、自身のスキルと意欲をアピールするための強力な材料となります。
- 宅地建物取引士: 不動産業界で仕事をする上での基礎的な資格であり、多くの企業で取得が推奨されます。
- 不動産鑑定士: 不動産の価値評価に関する最高峰の国家資格。特に物件の取得を担当するアクイジションのポジションでは、この資格を持つ人材は極めて高く評価されます。
- 証券アナリスト: 財務分析やポートフォリオ理論など、金融・投資に関する高度な専門知識を証明する資格です。金融業界からの転職者はもちろん、PM出身者が投資の視点を補強するためにも有効です。
- 不動産証券化協会認定マスター: まさに不動産と金融の融合領域をカバーする専門資格。不動産ファンドビジネスに特化した内容であり、AMを目指す上で最も親和性の高い資格の一つと言えるでしょう。
- 日商簿記検定(2級以上): 財務諸表を正確に読み解くための会計知識は、AMの全ての業務の基礎となります。2級以上の取得が望ましいです。
これらのスキルや資格は一朝一夕に身につくものではありません。自身のキャリアプランに基づき、計画的に学習・取得を進めていくことが重要です。
AMの仕事のリアル:業務内容、年収、そして将来性
アセットマネジメントの仕事は、華やかなイメージがある一方で、非常に緻密な分析とタフな交渉が求められる厳しい世界でもあります。ここでは、AMの具体的な業務サイクル、リアルな年収水準、そしてその先のキャリアパスについて掘り下げていきます。
AMの業務サイクル:入口から出口まで
AMの仕事は、大きく分けて「アクイジション(取得)」「アセットマネジメント(期中運用)」「ディスポジション(売却)」の3つのフェーズで構成されます。これら一連のプロセスを担うことで、ファンドの収益を最大化します。
- 入口:アクイジション(Acquisition)
ファンドの投資戦略に基づき、投資対象となる物件を探し出すフェーズです。不動産仲介会社や信託銀行などから情報を収集し、有望な案件を発掘します。物件が見つかると、詳細なデューデリジェンス(資産評価)を実施。キャッシュフローモデルを作成して投資採算性を厳密に分析し、弁護士や会計士といった専門家と連携しながら、法務・物理・経済的なリスクを洗い出します。最終的に、売り主との間で厳しい価格交渉を行い、契約を締結し、物件を取得します。 - 期中:アセットマネジメント(Asset Management)
取得した物件の価値を最大化するための運用フェーズです。まず、物件に最適なPM(プロパティマネジメント)会社を選定し、日々の運営管理を委託します。AMはPM会社を監督・指導しながら、稼働率向上や賃料増額のためのリーシング戦略を立案・実行します。また、資産価値を高めるための大規模修繕(CAPEX)やリノベーションといったバリューアップ施策を企画し、その意思決定を行います。定期的に投資家向けに運用状況をレポーティングすることも重要な業務の一つです。 - 出口:ディスポジション(Disposition)
ファンドの運用期間や市場の状況を総合的に判断し、最適なタイミングで物件を売却するフェーズです。売却戦略を策定し、仲介会社を選定して売却活動を開始します。購入希望者との交渉を経て、最も有利な条件で売却を完了させ、投資家にリターンを還元します。この出口戦略の巧拙が、ファンド全体の成功を大きく左右します。
リアルな年収水準
AMの年収は、国内の不動産業界の中でもトップクラスの水準にあります。ただし、所属する企業のタイプ(日系か外資系か)や個人の経験・スキル、そして役職によって大きな差があります。
不動産アセットマネジメント(AM)のキャリアと年収レンジ目安

一般的に、日系のAM会社(デベロッパー系、金融機関系など)は安定した給与体系である一方、外資系ファンドは基本給に加えて成果に応じたボーナスの割合が非常に大きく、高いパフォーマンスを発揮すれば30代で年収2,000万円以上を得ることも珍しくありません。
キャリアパスと将来性
AMとしてのキャリアは、アナリストやアソシエイトといったポジションからスタートし、経験を積むことでVP(ヴァイスプレジデント)、ディレクターへと昇進していくのが一般的です。
将来的には、以下のような多様なキャリアの選択肢が広がります。
- ファンドマネージャー: 複数のファンドを統括する責任者。
- アクイジション部門の責任者: 物件取得のプロフェッショナルとしてチームを率いる。
- 別のアセットタイプへの挑戦: オフィス専門から物流施設やホテル、ヘルスケア施設など、異なるアセットタイプの運用に挑戦し、専門性を広げる。
- 独立: 自ら不動産ファンドを立ち上げる。
- 投資家側への転身: 年金基金や保険会社など、機関投資家の立場でファンドを評価・選定する側に回る。
不動産投資市場が存続する限り、高度な専門性を持つアセットマネージャーへの需要がなくなることはありません。自身のスキルと経験を磨き続けることで、非常に豊かで将来性のあるキャリアを築くことが可能な職種です。
転職成功への実践ガイド:書類選考から面接まで
不動産アセットマネジメントへの転職は、専門性が高いがゆえに、一般的な転職活動とは異なる準備と戦略が求められます。ここでは、自身の経験を最大限にアピールするための書類作成術、面接で差をつけるためのポイント、そして成功の確率を高めるための転職エージェント活用法を具体的に解説します。
履歴書・職務経歴書の「翻訳術」
AMの採用担当者が知りたいのは、「あなたが投資家の資産を増やせる、AM人材と親和性があるのか」という一点です。そのため、これまでの経験を単に羅列するのではなく、親和性を見出す、翻訳する作業が不可欠です。
PM経験者の場合
「管理業務」を「投資価値向上への貢献」に翻訳します。具体的な数字を用いて実績をアピールすることが重要です。
- (悪い例) テナントの契約更新業務を担当。
- (良い例) 担当物件のテナント満足度向上施策を企画・実行し、更新時の交渉を粘り強く行った結果、賃料を平均3%増額させ、年間NOI(営業純利益)を500万円改善した。
収支改善、リーシング実績、修繕費の圧縮(Capex管理)といったキーワードを意識し、自身の業務が物件のキャッシュフローにどう貢献したかを明確に示しましょう。
金融業界経験者の場合
「金融スキル」を「不動産投資への応用力」に翻訳します。金融の専門用語だけでなく、不動産という具体的なアセットにどう活かせるかを記述します。
- (悪い例) DCF法による企業価値評価モデルの作成経験。
- (良い例) オフィスビルの投資分析において、DCF法を用い、将来の賃料変動リスクや大規模修繕費を織り込んだ精緻なキャッシュフローモデルを構築。投資判断に貢献した。
自身の分析能力が、不動産という不確実性の高いアセットのリスクをいかに低減させ、リターンを最大化できるかをアピールすることがポイントです。
面接対策:AMとしての視点を示す
面接では、書類で示した経験の深掘りと共に、AMとしてのポテンシャル、特にその思考様式が問われます。
- 「なぜAMなのか?」への明確な回答: この質問は必ず問われます。「PMの経験を活かしたい」だけでは不十分です。「現場での改善提案には限界があった。より上流の戦略レベルで、物件単位ではなくポートフォリオ全体の価値向上に貢献したい」など、戦術家から戦略家へ移行したいという強い意志とビジョンを語れるように準備しましょう。
- マーケットへの見識を示す: 「最近注目している不動産セクターはありますか?その理由は?」といった質問に備え、自分なりの投資仮説を持っておくことが重要です。日頃から不動産市況や経済ニュースにアンテナを張り、論理的に自身の考えを述べられるようにしておきましょう。
- 謙虚さと学習意欲: PM出身者であれば金融知識を、金融出身者であれば不動産実務を、それぞれ積極的に学んでいく姿勢を示すことが好印象に繋がります。
転職エージェントの戦略的活用法
不動産金融というニッチな業界では、専門特化した転職エージェントの活用が成功への近道です。彼らは、一般には公開されていない優良な求人案件を多数保有しているだけでなく、業界の内部情報や各企業の文化にも精通しています。
自身の経歴や目指すキャリアに応じて、複数のエージェントを使い分けるのが賢明です。
- 外資系に強いエージェント: 外資系ファンドを目指す方向け。英文レジュメ対策や英語面接のサポートも期待できます。(例:ロバートウォルターズなど)。
- 不動産金融特化型エージェント: 弊社bloom株式会社が得意にしている領域であり、コンサルタントの専門性が非常に高いのが特徴です。業界の深い知見に基づいた的確なアドバイスが受けられます。
- 大手総合型エージェント: 求人案件の数が圧倒的に多く、幅広い選択肢の中から自分に合った企業を探すことができます。(例:リクルートエージェントなど)。
転職エージェントは、あなたのキャリアを共に考えるパートナーです。自身の職務経歴を「翻訳」した上で相談に臨むことで、彼らもあなたの価値を正しく理解し、最適なポジションを紹介してくれるでしょう。このような戦略的な準備とサポートの活用が、難関であるAMへの転職を成功に導きます。
おわりに:未来の不動産投資を担うあなたへ
本記事では、不動産業界におけるキャリアの頂点の一つであるアセットマネジメント(AM)への道筋を、プロパティマネジメント(PM)と金融業界という2つの主要なキャリアパスから詳細に解説してきました。
重要なポイントを改めて整理します。
第一に、AMとは単なる管理者ではなく、投資家の資産を最大化する使命を負った戦略家であるということ。この「投資家視点」へのマインドセットの転換が、キャリアアップの最も重要な鍵です。
第二に、PMの持つ「現場感覚」と金融のプロが持つ「分析能力」は、どちらもAMにとって不可欠な要素であり、自身のバックグラウンドを強みとしつつ、不足するスキルを貪欲に学び続ける姿勢が求められます。
そして第三に、転職活動においては、過去の経験を「投資の言葉」に翻訳し、自身の価値を明確にアピールする戦略的な準備が成功を左右します。
アセットマネジメントへの道は決して平坦ではありません。高度な専門知識、厳しい交渉、そして重大な意思決定の連続です。しかし、その先には、自らの手で不動産の価値を創造し、都市の未来を形作り、投資家に大きなリターンをもたらすという、他では得られない大きなやりがいと達成感が待っています。
この記事を読んでくださったあなたは、既にキャリアアップへの第一歩を踏み出しています。自身の可能性を信じ、周到な準備を進めることで、未来の不動産投資を担うプロフェッショナルへの扉は必ず開かれます。あなたの挑戦を心から応援しています。
不動産業界に少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
あなたのこれまでの経験の中に、きっと活かせる強みが眠っています。
不動産、金融転職に特化したサポートをしているbloom株式会社では、これまでのご経験をどのように新しいキャリアに繋げられるのか、丁寧にご説明させていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。
参考URL
アセットマネジメント(AM)とは?役割や業務内容、必要なスキルについても解説 | 不動産管理・仲介業務のDXならいい生活のクラウドSaaS
不動産「AM・PM・BM」業務内容の違いをわかりやすく解説!不動産投資会社と管理会社の基礎知識
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⚫︎監修者
bloom株式会社 最高執行役社長 (COO) 小田村 郷
慶應義塾大学を卒業後、三井不動産リアルティ株式会社に入社し、不動産仲介(リテール・法人)の第一線で実務経験を積む。
その後、トーセイ・アセット・アドバイザーズ株式会社に移籍。不動産ファンドのアセットマネジメント(AM)業務を専門に担当し、投資家サイドの高度な専門知識を習得する。
独立後、bloom株式会社に参画。最高執行役社長として、不動産仲介からアセットマネジメントまで、不動産業界の川上から川下までを熟知したプロフェッショナルとして事業全体を牽引している。