はじめに:金利や市場価格以外の要因も。海外投資家の投資姿勢とは
東京を中心とする日本の不動産市場は、ここ数年で再び活気を取り戻しつつあります。背景には、円安や超低金利といったマクロ経済的な要素があることは言うまでもありませんが、それに加えて“海外の投資家ならでは”の目線や、彼らから見た日本の不動産が持つ特性が再評価されていることも見逃せません。
たとえば、日本国内の個人投資家と海外の個人投資家では、投資に対するスタンスや優先順位が大きく異なります。日本の個人投資家の多くは、物件価格の上昇期待や所得税対策といった節税目的、あるいは相続を見据えた資産形成を目的としています。一方で、海外の投資家は、資産の分散や長期的なインフレヘッジを目的としているケースが多く、投資先としての安定性や市場全体の信頼度を重視する傾向があります。
また、機関投資家においても、国内の金融機関や保険会社が規制上の制約から慎重な投資行動をとる一方で、海外のファンドやREITは、より柔軟でスピーディな意思決定を行っており、東京市場を戦略的なポートフォリオの一部として組み込んでいます。彼らにとっては、日本市場はリスクヘッジとして機能する“安全地帯”とさえ言える存在なのです。
海外投資家は日本の不動産の物件品質自体を評価
では、なぜ海外投資家がここまで日本の不動産に注目しているのでしょうか。その大きな理由の一つが、「不動産の物件品質」に対する圧倒的な信頼です。
日本では、建物の設計段階から耐震性や省エネルギー性能、バリアフリー対応などが厳格に求められており、完成後の建物もその基準に基づいて管理・保守されています。特に、近年の新築マンションではスマートホーム機能やZEH(ゼロエネルギー住宅)対応なども進んでおり、設備面でも国際水準を上回る品質を持つ物件が少なくありません。
また、建物のハード面だけでなく、管理会社の運営体制や居住者への対応など、いわゆる“ソフト面”の品質も非常に高い水準にあります。ゴミ出しルールの徹底や清掃の頻度、防犯カメラの配置、修繕積立金の透明な運用など、日本独自の緻密な管理文化が、物件価値の維持・工場を期待する海外投資家にとって大きな安心材料となっています。
こうした総合的な品質が、「日本の不動産は買って損はしない」「収益よりも安定性を重視する投資対象として魅力的」といった評価につながっているのです。特に、政治的・地政学的リスクや為替不安、関税リスクが顕在化している他国と比べて、日本は法制度や税制が安定しており、先進国の中でも特に信頼度が高いとされています。
2025年、ライフサイエンス不動産投資の最新動向とキャリアへの影響
長期的な需給バランスを考えると「日本の不動産は“買い時”」
また投資家の中には、「今が買い時」と判断する声が強まっています。その根拠として語られるのが、「建設期」から「購入期」への移行です。
過去10年、日本では再開発ラッシュや五輪需要も相まって、多くの新築物件が供給されてきました。しかし、近年では資材価格の高騰や人手不足の影響で、新築物件の供給はやや鈍化傾向にあります。その結果、供給過多の懸念が後退し、買い手にとって相対的に有利な市場環境が整いつつあります。
また、国内需要の堅調さも重要な要素です。東京・大阪といった都市部では、共働き世帯の増加や単身世帯の増加により、一定の住宅ニーズが維持されています。オフィス需要についても、フレキシブルオフィスやハイブリッドワーク対応施設など、新たなニーズに対応した物件が支持を得ています。
このような中で、価格調整を伴った“選別の時代”が到来していると捉える投資家にとっては、今こそが長期保有を前提とした買い時であると考えられます。
国内デベロッパー供給サイドは海外投資家による購入増加を実感する一方、定量的全体的なデータがない状況
不動産デベロッパーの多くが、「最近は海外投資家の問い合わせが急増している」と口をそろえています。とくに新築マンションや収益物件に関しては、販売説明会を英語や中国語で実施する企業も増えており、販売体制の国際化が進んでいます。
しかし、こうした実感に対して、統計的な裏付けはまだ十分ではありません。新築物件については販売元が情報を持っているためある程度の集計が可能ですが、中古物件については売主と買主が直接交渉するケースも多く、実際に海外資本がどれだけ流入しているのかを明確に把握するのは困難です。
とはいえ、クラウドファンディング型の不動産プラットフォームが登場し、海外からの少額投資も増えている現状を鑑みると、こうした「見えにくい投資需要」が市場に与える影響は無視できないものになってきています。
今後は、不動産仲介業界や官民連携によるデータ整備が求められる段階に入っていると言えるでしょう。
おわりに:実需と投資需要とで引き続き堅調
日本の不動産市場は、実需と投資需要という二つの安定的な支柱に支えられています。共働き世帯や高齢化社会における住まいのニーズ、地方から都市部への人口流入などによって、住宅需要は底堅さを保っています。
一方で、海外からの投資資金は、「価格上昇を狙うマネー」というよりも、「資産保全やポートフォリオ多様化を目的とした堅実な資金」が中心です。この二つの需要が同時に存在することによって、日本の不動産市場は過度なバブルにも陥らず、安定した成長を維持しています。
さらに、クラウドファンディングやREIT、トークン型不動産といった新しい金融商品も登場し、個人が少額から投資できる環境が整備されてきています。これにより、不動産投資は一部の富裕層だけでなく、広く一般にも開かれた選択肢となりつつあります。
また、専門人材ニーズも高まっており、コンサルティングファームによる投資アドバイザリーや、不動産アセットマネージャー、ノンリコースローンレンダーなど、不動産投資周辺の転職市場も活性化しています。今後は、テクノロジーとグローバル資本が融合する中で、より効率的かつ透明な不動産市場の形成が期待されます。
リスクがまったくないとは言えませんが、それを上回るだけの信頼性と実績が、日本の不動産市場には存在しています。海外投資家たちが今、日本を「安全で賢明な投資先」として見ているのには、こうした背景があるのです。
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参考文献・情報リンク(クリックで外部サイトへ)
2025/5/23 NHK 「海外勢が注目 なぜ今 東京の不動産?」