サマリー
本記事は、2025年現在、空前の拡大を見せるコンサルティング業界への転職を検討する求職者に向けた、包括的かつ実践的なキャリアガイドです。国内コンサルティング市場が2兆円規模に達し、2030年に向けてさらなる成長が予測される中、業界は「経験者のみ」という狭き門から、意欲ある未経験者を広く歓迎する「ポテンシャル採用」へと大きく舵を切っています。
本稿では、なぜ今未経験者の採用が増えているのかという構造的背景を分析し、戦略系、総合系、IT系といったコンサルタントの種類の詳細な解説を行います。特に、未経験者が狙い目となる「PMO」「SAP導入」「SaaSコンサル」といった具体的職種について、その業務内容や求められるスキルを実務レベルで詳述します。また、転職成功率を高めるための資格戦略(中小企業診断士、MBA、PMP等)や、面接対策、職務経歴書の書き方、さらには「激務」というイメージを払拭する近年のホワイト化・健康経営への取り組みについても網羅します。
コンサルティング業界の市場規模と将来予測:2025年最新版
1 2兆円市場への到達と持続的な成長トレンド
日本のコンサルティング業界は、歴史的な転換点を迎えています。コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社の調査によれば、2023年度の国内コンサルティング市場規模はついに2兆円の大台を突破しました。この数字は、単なる業界の好況を示すだけでなく、日本企業の経営課題が複雑化し、外部の専門家による支援(サポート)なしには立ち行かない状況が常態化していることを示唆しています。
特筆すべきは、この成長が一過性のものではないという点です。2027年前後までは確実なプラス成長が予測されており、2030年度に向けても市場は拡大基調を維持すると見られています。この長期的な成長トレンドは、これから業界を目指す未経験者にとって極めて重要な意味を持ちます。市場が拡大しているということは、ポストが増え、教育への投資余力が生まれ、未経験者を受け入れる土壌が肥沃であることを意味するからです。
2 成長を牽引するドライバー:DXと実行支援
市場拡大の最大の要因は、デジタルトランスフォーメーション(DX)への需要爆発です。企業は従来のビジネスモデルをデジタル技術で刷新することを迫られており、戦略策定だけでなく、システムの導入から定着までを行う「実行支援型」のコンサルティングニーズが急増しています。
かつてコンサルタントの仕事は「戦略レポートを書くこと」が主流でしたが、現在は「クライアントと共に汗をかき、システムを動かし、業務を変えること」へとシフトしています。この変化こそが、未経験者の採用枠を広げる最大の要因となっています。なぜなら、実行フェーズにおいては、特定の業界知識や、営業・事務・製造などの現場経験を持つ人材の知見が、机上の空論ではないリアルな解決策を生み出すために不可欠だからです。

なぜ今、未経験者の採用が増えているのか?
「コンサルタント=選ばれしエリート」というイメージは、過去のものとなりつつあります。2025年現在、多くのコンサルティングファームが未経験者を「歓迎」し、大量採用を行っています。その背景には、以下の3つの構造的な理由が存在します。
1 慢性的なIT人材不足と「ポテンシャル採用」の拡大
DXプロジェクトの急増に対し、即戦力となるITコンサルタントの供給は全く追いついていません。そのため、各ファームは採用基準を変更し、「ITスキルは入社後に教える」という方針の下、論理的思考力やコミュニケーション能力といった基礎能力(ポテンシャル)を重視した採用に切り替えています。
特に20代から30代前半の層に対しては、前職の職種を問わず、学習意欲と成長可能性を評価して採用する傾向が顕著です。アンテロープキャリアコンサルティングのデータによると、戦略コンサルタントのような最難関ポジションであっても、0年〜3年の経験年数(つまり第二新卒や完全未経験)を対象としたポテンシャル採用枠が一定数設けられています。
2 「超上流」から「現場」まで:業務領域の多様化
コンサルティングの領域が、経営戦略という「超上流」から、現場の業務改善やシステム保守といった下流工程まで広がったことで、多様な人材が必要となりました。
例えば、システム導入プロジェクトにおいては、高度なプログラミング能力を持つエンジニアだけでなく、現場のユーザー(社員)に操作方法を教えたり、業務マニュアルを作成したりする役割も重要になります。こうした業務では、前職で「人に教える経験」や「マニュアル作成経験」を持つ人材が、IT未経験であっても即戦力として活躍可能です(okです)。
3 労働集約型ビジネスモデルのスケールメリット
コンサルティングビジネスは、基本的には「コンサルタントの人数 × 単価」で売上が決まる労働集約型のモデルです。2兆円市場の需要に応えるためには、ファーム側はとにかく「人」を増やさなければなりません。大手総合系ファームを中心に、年間1,000人単位での採用が行われているのはこのためです。この「数」の論理が、未経験者にとっての入り口を大きく広げています。
🔗未経験からITコンサル、システムコンサルへの転職は可能?|成功するためのネットワーキング
コンサルタントの種類と具体的な職種
未経験者がコンサルタントを目指す際、まずは業界の全体像と職種の種類を理解することが不可欠です。ここでは主要なファームの分類と、未経験者が特に狙い目となる具体的な職種について解説します。
1 総合系コンサルティングファーム
概要と特徴:
戦略立案からITシステム導入、業務アウトソーシング(BPO)までをワンストップで提供する巨大組織です。Big4(デロイト、PwC、KPMG、EY)やアクセンチュア、ベイカレント・コンサルティングなどが代表的です。これらの企業は多くが上場しているか、巨大なグローバルグループに属しており、安定した経営基盤を持っています。
未経験者のチャンス:
採用数が最も多く、教育制度も整っているため、未経験者が最初に目指すべき領域です。特に「ビジネスコンサルタント」や「ITコンサルタント」といった職種で、大量の求人が出ています。
2 戦略系コンサルティングファーム
概要と特徴:
企業の経営トップに対して、全社戦略やM&Aなどの重要課題を提言します。マッキンゼーやBCGなどが該当します。
未経験者のチャンス:
非常に狭き門ですが、20代の若手であればポテンシャル採用の可能性があります。ただし、極めて高い論理的思考力が求められるため、徹底した選考対策が必要です。
3 ITコンサルティングファーム・シンクタンク系
概要と特徴:
IT戦略の立案やシステム導入支援に特化しています。株式会社野村総合研究所(NRI)や株式会社三菱総合研究所などのシンクタンク系も、システムインテグレーション機能を持っており、このカテゴリに含まれます。
未経験者のチャンス:
エンジニア経験者はもちろん、ITへの興味・関心が強い未経験者も歓迎されます。入社後に技術研修が充実しているケースが多く、手に職をつけたい方におすすめです。
未経験者が狙い目の具体的な領域・職種
「コンサルタント」という肩書きでも、実際の仕事は様々です。ここでは、未経験者が特に採用されやすく、かつ前職の経験を活かしやすい3つの「狙い目」領域を深掘りします。
1 PMO(Project Management Office)コンサルタント
業務内容の解像度:
PMOは、プロジェクトマネージャー(PM)の右腕として、プロジェクトの進行を「支援」する役割です。ITの専門知識よりも、「管理能力」と「調整能力」が問われます。
具体的なタスク例:
- 進捗管理: 「誰が」「いつまでに」「何を」やるのかをExcelや管理ツールで可視化し、遅れているタスクがあれば担当者をフォローします。
- 課題管理: プロジェクト内で発生した問題(バグ、仕様未決定など)をリスト化し、解決までの道筋を管理します。
- 会議運営: 会議のアジェンダ作成、ファシリテーション、議事録の作成を行います。
- 資料作成: ステークホルダーへの報告用PowerPoint資料を作成します。
未経験者が活かせるスキル:
営業事務でのスケジュール調整経験、チームリーダーとしてのメンバー管理経験、正確な事務処理能力などがそのまま活かせます。「ITは詳しくないが、段取りを組むのは得意」という方にとって、PMOはコンサル業界への最適な入り口です。
2 SAP導入コンサルタント
業務内容の解像度:
企業の基幹業務(会計、物流、人事など)を支えるERPパッケージソフト「SAP」の導入を支援します。SAPは多くの大企業で採用されており、その専門家は市場価値が非常に高いです。
モジュール(担当分野)と親和性:
SAPは業務ごとに「モジュール」と呼ばれる機能群に分かれており、それぞれの業務経験者が優遇されます。
- FI(財務会計)/ CO(管理会計): 経理・財務の実務経験者や、簿記資格保持者が歓迎されます。
- SD(販売管理): 営業部門での受注・出荷プロセスの知識が活かせます。
- MM(在庫購買管理)/ LE(物流管理): 資材調達や倉庫管理、物流部門での経験が活かせます。
- HR(人事管理): 人事・労務・給与計算の経験が活かせます。
- QM(品質管理)/ PS(プロジェクト管理): 製造業での品質管理業務やプロジェクト管理経験が活かせます。
キャリアの魅力:
特定のモジュールに精通することで、「代わりの効かない専門家」になれます。未経験からでも、前職の業務知識をテコにして、高単価なコンサルタントへと転身可能です。
3 SaaS導入・カスタマーサクセス(CS)コンサルタント
業務内容の解像度:
クラウド型サービス(SaaS)を導入した顧客に対し、そのツールを使って成果を出してもらうための支援を行います。これは従来の「売り切り型」の営業とは異なり、顧客の成功(サクセス)に伴走する役割です。
具体的なタスク例:
- オンボーディング: 導入直後の設定支援や、操作説明会の実施。
- 活用コンサルティング: 顧客の業務フローを分析し、「もっとこう使えば効率化できる」という提案(Fit & Gap分析)を行う。
- アップセル提案: より高度なプランや追加機能の提案を行う。
未経験者が活かせるスキル:
何よりも「コミュニケーション能力」と「顧客志向」が求められます。販売・接客業の経験や、法人営業の経験があれば、IT知識がゼロでも採用される確率は高いです(okです)。年収も、カスタマーサポート職からCS職へキャリアアップすることで、大幅な向上が見込めます。
未経験からの転職を成功に導く「資格」と「スキル」
「資格は必要ですか?」という質問はよくありますが、必須ではありません。しかし、未経験者が熱意と基礎知識を証明するために、資格取得は非常に有効な「対策」となります。
1 転職に有利な資格ベスト5(2025年版)
以下の資格は、コンサルティング業界において特に評価が高いものです。

2 求められるポータブルスキル
資格以上に重視されるのが、業界を問わず持ち運び可能な「ポータブルスキル」です。
- 論理的思考力(ロジカルシンキング):
複雑な事象を因数分解し、原因と解決策を構造的に考える力です。面接では「ケーススタディ」を通じて厳しくチェックされます。 - ドキュメンテーション能力:
PowerPointやExcelを用いて、情報をわかりやすく視覚化し、相手を説得する資料を作成する力です。PMOなどでは特に重視されます。 - コミュニケーション能力(調整力):
クライアントや社内チームメンバー、ベンダーなど、立場の異なる関係者の間に入り、合意形成を図る力です。単に「話がうまい」だけでなく、「聞く力」と「まとめる力」が必要です。 - キャッチアップ力(学習意欲):
コンサルタントは常に新しい業界、技術、法規制について学び続ける必要があります。未知の分野(専門外の分野)に対しても、好奇心を持って短期間で知識を吸収する姿勢が求められます。
選考対策:書類・面接・エージェント活用
コンサルティングファームの選考プロセスは特殊であり、一般的な事業会社と同じ感覚で挑むと失敗します。ここでの準備が合否を分けます。
6.1 職務経歴書の書き方:コンサル視点での「再定義」
職務経歴書では、これまでの実績をただ羅列するのではなく、「課題解決のプロセス」を記述する必要があります。
- 悪い例: 「営業として売上目標を達成しました。」
- 良い例: 「営業活動における成約率の低さを課題と捉え(課題特定)、顧客ヒアリングに基づくトークスクリプトの標準化を実施しました(施策実行)。その結果、チームの成約率が10%向上し、目標比120%を達成しました(成果)。」
このように、「課題(Problem)→ 解決策(Solution)→ 成果(Result)」のフレームワークで経験を記述することで、コンサルタントとしての適性をアピールできます。
6.2 面接対策:頻出質問と逆質問の極意
コンサルの面接では、以下のような質問が頻出します。
- 「なぜ今の会社ではなく、コンサルなのか?」: 現職への不満ではなく、「より広範な課題解決がしたい」「専門性を高めたい」といったポジティブな動機を論理的に説明する必要があります。
- 「なぜうちのファームなのか?」: 競合他社との違い(強みのある領域、企業文化、研修制度など)をリサーチし、差別化して答える必要があります。
- 「入社後にやりたいことは?」: 自分のスキルがどの領域(IT、人事、SCMなど)で活かせるかを具体的にイメージできているかが問われます。
逆質問(面接官への質問):
「特にありません」はNGです。「御社で活躍されている未経験入社の方の共通点は何ですか?」「現在注力されている○○のプロジェクトにおいて、私の××の経験は貢献可能でしょうか?」など、入社意欲とリサーチの深さを示す質問を用意しましょう。
6.3 転職エージェントの活用
コンサル業界の求人は非公開のものも多く、またファームごとに選考のポイントが異なります。コンサル業界に特化した転職エージェント(紹介会社)を利用することで、過去の面接データの共有や、書類の添削、ケース面接の模擬練習などのサポートを受けることが可能です。プロの視点を入れることで、内定率は格段に上がります。
年収・待遇・働き方:ホワイト化する業界環境
1 年収水準とキャリアパス
コンサルティング業界の年収は、全業界平均と比較しても明らかに高水準です。未経験スタートであっても、成果次第で短期間での昇給が可能です。

アンテロープのデータによると、20代後半から30代のシニアコンサルタントクラスで年収800万円〜1,000万円を超えることも珍しくありません。また、固定給に加え、業績連動賞与の比率が高いファームも多く、個人の頑張りがダイレクトに報酬に反映される環境です。
2 「激務」は過去の話? 健康経営への取り組み
かつては徹夜や長時間労働が当たり前と言われたコンサル業界ですが、現在は上場企業(プライム市場)を中心に、働き方改革が急速に進んでいます。
多くの大手ファームが「健康経営優良法人(ホワイト500)」に認定されています。例えば、PwC JapanグループやEYストラテジー・アンド・コンサルティング、三井不動産グループなどは、残業時間のモニタリング、リモートワークの推進、男性の育児休業取得促進など、従業員の健康と生活を守る制度を整備しています。
もちろん、プロジェクトの納期前など繁忙期には忙しくなりますが、「恒常的な長時間労働」は是正されつつあり、メリハリのある働き方が可能になっています。
結論:未経験からコンサルタントを目指す方へ
2025年の今、コンサルティング業界はかつてない変革と成長の只中にあります。市場規模は2兆円を超え、未経験者の採用枠は「超上流」の戦略から「現場」のIT導入まで、全方位に拡大しています。
未経験からの転職は、決して平坦な道ではありません。新しい知識を学び続ける姿勢、論理的に考え抜くタフさ、そしてクライアントの課題に向き合う誠実さが求められます。しかし、そこで得られるスキル、経験、そして年収は、あなたのキャリアを劇的に引き上げるものとなるでしょう。
成功のためのアクションプラン:
- 自己分析: 自分のこれまでの経験(営業、事務、開発など)が、コンサル業界のどの領域(PMO、SAP、SaaSなど)で「武器」になるかを棚卸しする。
- 情報収集: 興味のあるファームがどの分野(戦略、総合、IT)に強みを持っているか、上場しているか、などの企業研究を行う。
- スキルアップ: 必要であれば、中小企業診断士や簿記などの資格学習を開始し、意欲を行動で示す。
- プロに相談: 転職エージェントに登録し、自分の市場価値を客観的に把握する。
「自分には無理かもしれない」とあきらめる前に、まずは一歩を踏み出してみてください。業界は、あなたの挑戦を待っています。
あなたのキャリアを変える一歩を、戦略的に踏み出してください。中途採用の門戸は、準備ができている者に対して常に開かれています。
コンサル業界へのキャリアチェンジを検討されている方は、🔗コンサルティングファーム特化転職エージェントのbloom株式会社にお問い合わせください。
・ITや戦略、業務設計などの経験を活かしたい方
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以下より完全無料相談のお問い合わせが可能です。
参考URL
「コンサル業界の市場規模と将来予測」 2024年最新版を公開|ついに2兆円の大台となった市場規模、27年前後まではプラス成長予測 | コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社のプレスリリース
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- 監修者
bloom株式会社 代表取締役 林 栄吾
慶應義塾大学を卒業後、株式会社ベイカレント・コンサルティングに入社。 事業戦略の策定・実行支援を中心としたコンサルティング業務に従事。
同社ではアカウントセールスマネージャーとして新規顧客開拓、メンバー育成を担う傍ら、採用責任者・人事責任者を歴任し、戦略コンサルティングと人事・採用の両面で豊富な実績を持つ。
独立後はbloom株式会社を設立。代表取締役として、コンサルティングと人事で培った知見を基に、不動産業および人材紹介業を統括している。