サマリー
2024年から2025年にかけて、コンサルティング業界はかつてない変革の時を迎えています。「戦略」のコモディティ化が進む一方で、クライアント企業が真に求めているのは、絵に描いた餅で終わらせない「実行支援」と、ビジネスのあり方を根底から覆す「生成AI」の実装です。かつてのような「きれいな戦略を描くだけ」のプロジェクトは減少し、現場に入り込んで汗をかく伴走型の支援や、最先端テクノロジーを活用した変革が主流となりつつあります。
本記事では、転職支援のプロフェッショナルである自社の視点から、業界の最新トレンド、求められる人材像、そして活況を呈する採用市場の裏側を徹底的に解説します。未経験からコンサル業界へ挑戦する方や、異業界での経験を活かしてキャリアアップを目指す方にとって、現在の市場は「超」がつくほどのチャンスを含んでいます。活況な「オープンポジション」の求人情報や、気になる年収ランキング、選考対策まで、求職者の方が知っておくべき情報を網羅しました。ぜひ、あなたのキャリア戦略の参考にしてください。
「戦略」のコモディティ化とコンサルティングの構造変化
1 なぜ「戦略」だけでは価値が出しにくいのか
かつて、コンサルティングファームの代名詞といえば「戦略」でした。明晰な頭脳を持つ少数のコンサルタントが、経営層に対して高尚な戦略を提示する「参謀」としての役割が花形とされていました。しかし、現在その構造は大きく変化しています。多くの求職者の方が抱く「コンサル=戦略」というイメージは、実態とは少しズレ始めているのです。
その最大の要因は、「知識の民主化」と「戦略のコモディティ化」にあります。かつては一部の専門家しか知り得なかった経営フレームワークや成功事例といった情報は、インターネットやビジネス書籍を通じて広く普及しました。これにより、一般的な戦略立案であれば、事業会社の優秀な経営企画部門や現場のマネージャーでも十分に立案可能なケースが増えています。
さらに、市場には類似する機能や品質を持つ商品・サービスが溢れ、製品の「モジュール化」が進んだことで、技術力だけで他社と差別化することが難しくなっています。このような環境下では、「どの山に登るか(What)」という戦略そのものの価値よりも、「どうやって登り切るか(How)」、そして「実際に登頂する(Do)」という実行フェーズの価値が相対的に高まっているのです。
2 クライアントが求める「実行支援」のリアル
現在、多くのコンサルティングファームで「実行支援」という言葉がキーワードになっています。これは、戦略策定後のシステム導入、業務プロセスの改善、現場への定着化までを一気通貫で支援するスタイルを指します。
例えば、製造業におけるサプライチェーン改革(SCM)の事例を見てみましょう。ある大手ファームでは、システムベンダーと連携し、製造実行システム(MES)の導入を通じてサプライチェーンの強靭化を支援しています。ここでは、単に「在庫を減らしましょう」と提案するだけでなく、グローバルな生産体制において現場のオペレーションがどう変わるべきか、システムがどう連携すべきかを詳細に設計し、現場への導入まで責任を持ちます。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈では、この傾向がさらに顕著です。戦略とITはもはや不可分であり、システムの構築・運用なしに絵を描くことは不可能です。クライアント企業は、慢性的なIT人材不足に悩んでおり、プロジェクトを推進できる「PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」や、現場とITをつなぐ「ブリッジ人材」としてのコンサルタントを強く求めています。

生成AIがもたらす破壊的イノベーションと業務変革
1 コンサルティングファーム自体の変革
2023年以降の生成AI(Generative AI)の爆発的な普及は、コンサルティング業界そのもののあり方を変えようとしています。2024年、そして2025年に向けて、このトレンドは「導入支援」から「実益の創出」へとフェーズを移行しています。
PwC Japanグループなどの大手ファームは、生成AI専門のタスクフォースをいち早く組成し、事業化支援、導入支援、リスク管理支援の3つの柱でサービスを展開しています。コンサルタント自身の業務においても、市場調査や資料作成、議事録の要約といった定型業務はAIによって自動化されつつあります。これにより、コンサルタントはAIが生成したアウトプットを検証し、より高度な意思決定支援や、AIには代替できない「人間同士のコミュニケーション」に注力することが求められています。
2 業界別・生成AI活用の最前線
生成AIの活用は、単なる業務効率化のツールを超え、各業界のビジネスモデルそのものに影響を与えています。

3 日本企業における「コスト削減」への偏重と課題
調査によると、生成AIの活用目的において、日本企業と米国企業の間には明確な意識の差が存在します。米国企業が生成AIを「成長の原動力」や「顧客満足度向上」のために活用しようとしているのに対し、日本企業は「既存業務のコスト削減」や「工数削減」を重視する傾向があります。
ここに、コンサルタントとしての大きなチャンスがあります。クライアント(日本企業)の「コストを下げたい」という当面のニーズに応えつつ、そこから一歩踏み込んで「AIを使ってどうやって売上を上げるか」「新しいビジネスを創るか」という成長戦略を提示できる人材が、今最も市場価値が高いのです。
2025年 コンサル業界の転職・採用市場動向
1 採用は「拡大」から「安定成長」フェーズへ
数年前までの「採用バブル」とも言える無差別的な大量採用は一段落しましたが、コンサル業界の採用意欲は依然として旺盛です。2025年に向けては、より質の高い人材を求める「安定成長」のフェーズに入っています。
データを見ると、コンサルティング業界の在籍者数は2024年11月時点でも前年比プラス成長を維持しており、3月から11月にかけて約4,700名が増加しています。一時期採用を抑制していた大手総合ファームも、再び積極的な採用姿勢を見せています。
ただし、選考のハードルは決して低くありません。単に「人手が足りない」という理由での採用は減り、未経験であっても「論理的思考力」や「学習意欲」が高いポテンシャル層、あるいは特定の業界知見を持つ経験者が厳選して採用される傾向にあります。
2 年収・給与のトレンド:依然として高水準
コンサル業界への転職を検討する際、やはり気になるのは年収でしょう。業界全体の年収水準は依然として高く、特にM&Aアドバイザリーや戦略系ファームではトップクラスの報酬が提示されています。
以下の表は、最新のデータに基づくコンサルティング業界の平均年収ランキングの一部です。

総合系ファームやITコンサルタントであっても、事業会社と比較すれば高い給与水準です。未経験からの転職の場合、前職の年収を考慮しつつ、入社後の評価に応じて年収が急上昇するケースも珍しくありません。
3 「オープンポジション」求人の急増
最近の求人トレンドとして特筆すべきなのが、「オープンポジション」での採用です。これは、応募の段階で「〇〇コンサルタント」と職種を限定せず、選考プロセスを通じて本人の適性や希望を見極め、最適な部署やプロジェクトに配属するスタイルです。
オープンポジションのメリット:
- 未経験でも挑戦しやすい(未経験OK): 具体的なスキル要件が決まっていないため、「自分に何ができるかわからないが、コンサルに挑戦したい」という層にとって門戸が広いです。
- キャリアの可能性が広がる: 自分では想定していなかった領域(例えば、営業経験を活かしたチェンジマネジメントや、人事経験を活かした組織人事コンサルなど)をファーム側から提案してもらえる可能性があります。
- ミスマッチの防止: 選考の中でじっくりと相互理解を深めるため、入社後の「思っていた仕事と違う」というギャップを減らせます。
オープンポジションの注意点:
- アピールの難しさ: 専門スキルよりも「人物面」や「ポテンシャル」が重視されるため、志望動機や自己PRにおいて「なぜコンサルなのか」「自分の強みをどう活かすか」を言語化する能力が厳しく問われます。
- 配属の不確実性: 入社直前まで具体的な業務内容が決まらないことがあり、専門性を追求したい方には不安が残る場合もあります。
求職者に求められるスキルとマインドセット
1 未経験者に求められる「ポテンシャル」の正体
コンサルティングファームは未経験者(ポテンシャル採用)を歓迎していますが、そこで見ているのは「現時点での知識量」ではありません。重視されるのは「思考のプロセス」と「素養」です。
特にケース面接では、以下の3つのポイントが評価の分かれ目となります。
- 論理的思考力(ロジカルシンキング): 複雑な事象を構造化し、因果関係を整理して考える力。フェルミ推定(市場規模の算出など)やビジネスケースを通じて、答えのない問いに対して妥当な仮説を導き出せるかが見られます。
- コミュニケーション能力: ここで言うコミュニケーションとは、単に流暢に話すことではありません。面接官(クライアント役)の意図を正確に汲み取り、フィードバックを素直に受け入れ、議論を発展させる「知的柔軟性」が重要です。
- 思考体力: プレッシャーのかかる状況下でも、諦めずに考え抜くスタミナです。
「本に書いてあるフレームワークをただ当てはめるだけ」「思いつきのアイデアを羅列するだけ」といった対応は、ケース面接で最も嫌われるパターンですので注意が必要です。
2 「英語」と「グローバル」、そして「リモート」
外資系ファームはもちろん、日系ファームであってもクライアントのグローバル展開を支援する案件が増えています。「英語力」は必須要件ではない求人も多いですが、ビジネスレベルの英語力(TOEIC 800点以上など)があれば「歓迎」されることは間違いありません。特にマネージャークラス以上を目指す場合や、海外オフィスとの連携が必要なプロジェクトでは、英語力がキャリアの天井を押し上げます。
また、働き方の面では「リモートワーク」が定着しています。ただし、プロジェクトのフェーズやクライアントの意向によっては、常駐や出社が必要なケースもあります。「リモート可」の求人であっても、対面でのコミュニケーションを重視する場面があることを理解しておく必要があります。
3 異業界の経験こそが武器になる
「コンサルタント=超エリート・高学歴」というイメージだけで萎縮する必要はありません。実は、事業会社での「泥臭い」実務経験こそが、今のコンサル業界では高く評価されます。
- 営業経験者: 顧客の懐に入り込む力、調整力、数字へのこだわりは、コンサルティング営業やプロジェクト推進において強力な武器になります。
- 人事担当者: 人的資本経営への関心が高まる中、人事制度設計やタレントマネジメントの知見を持つ人材は、組織人事コンサルタントとして即戦力です。
- 製造業・メーカー出身者: 工場の現場を知っている、サプライチェーンの実務経験があるという事実は、机上の空論ではないDX推進を行う上で極めて重要です。
- IT・金融業界出身者: 言わずもがな、DXやフィンテック関連のプロジェクトで引く手あまたです。
転職活動における具体的なアクション
1 転職エージェントの活用
コンサル業界の選考プロセスは特殊であり、独力での対策は困難な場合があります。特にケース面接の対策や、各ファームの社風の違い(「Up or Out」が強いのか、協調性を重んじるのかなど)を理解するためには、業界に特化した転職エージェントや、グループ会社のエージェント機能を活用することを強くお勧めします。
エージェントは、表には出てこない「非公開求人」や、ファームごとの「面接でよく聞かれる質問」などの情報を持っています。
2 ターゲット業界の選定:総合、IT、戦略、ブティック
一口にコンサルと言っても、ファームによって強みやカラーは異なります。自分の志向に合わせてターゲットを選定しましょう。
- 総合系(Big4など): 戦略から実行、ITまでフルラインナップで提供。大規模案件が多く、多様なキャリアパスが可能。安定した基盤があり、トレーニング制度も充実しています。
- 戦略系: 少数精鋭で経営課題の最上流を扱いますが、最近ではデジタル部門を強化し、実行支援まで手掛けるケースが増えています。
- IT系: テクノロジーを軸にした変革支援。現在の採用ボリュームゾーンであり、未経験からITスキルを身につけたい人にもチャンスがあります。
- ブティック・特化型: 特定の業界(医療、再生エネルギー、製造業など)や機能(人事、SCM、M&A)に強みを持ちます。「専門」性を磨きたい人に適しています。
3 最後に
変化の激しい現代において、コンサルタントという職業は、常に新しい課題に直面し、自己成長を続けられる刺激的な環境です。「戦略」だけでなく「実行」と「テクノロジー」を武器に、クライアントの変革を支援する仕事は、社会に大きなインパクトを与えることができます。
「未経験だから」「自信がないから」と躊躇する必要はありません。今のコンサル業界は、多様なバックグラウンドを持つ人材を求めています。あなたのこれまでの「経験」が、コンサルタントとしての「活躍」の土台となります。
あなたのキャリアを変える一歩を、戦略的に踏み出してください。中途採用の門戸は、準備ができている者に対して常に開かれています。
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参考URL
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●監修者
bloom株式会社 代表取締役 林 栄吾
慶應義塾大学を卒業後、株式会社ベイカレント・コンサルティングに入社。 事業戦略の策定・実行支援を中心としたコンサルティング業務に従事。
同社ではアカウントセールスマネージャーとして新規顧客開拓、メンバー育成を担う傍ら、採用責任者・人事責任者を歴任し、戦略コンサルティングと人事・採用の両面で豊富な実績を持つ。
独立後はbloom株式会社を設立。代表取締役として、コンサルティングと人事で培った知見を基に、不動産業および人材紹介業を統括している。