サマリー
2025年のコンサルティング業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の定着と経済環境の変化に伴い、かつてない構造的転換期にあります。本レポートでは、転職市場における最新の採用動向と、各コンサルティングファームの特性を体系的に分析しました。
- 市場動向: ポテンシャル採用の波は落ち着き、即戦力となる「専門性」と「応用力」を求める採用厳格化フェーズへ移行。特にDXやAI領域の実装力を持つ人材への需要が急増しています。
- ファーム分類: 戦略、総合、IT、FAS、シンクタンク、組織人事の6大分類を定義。それぞれの「核心的価値(Value)」と「プロジェクト特性」を詳述し、従来の境界線が融解しつつある現状を解説します。
- キャリア適合性: 自身の志向性(知的探求、変革推進、技術志向など)とファームの特性(Fit)を見極めることが、キャリア成功の鍵です。「35歳限界説」は形を変え、年齢よりも「タグ付け(特定の強み)」が重視される時代になりました。
- 結論: コンサルタントとしてのキャリアを構築するには、漠然とした憧れではなく、自身の経験と業界ニーズを戦略的に合致させる必要があります。
本記事は、これからコンサルティング業界を目指す方、およびキャリアアップを検討する方にとって、最適なファーム選びと戦略的な転職活動の羅針盤となることを目的としています。

2025年におけるコンサルティング産業の構造的転換
2023年から2025年にかけて、日本のコンサルティング業界は歴史的な転換点を迎えています。かつては「経営の参謀」として一部の大企業のみが利用する特権的なサービスであったコンサルティングは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の社会的要請とビジネス環境の複雑化を背景に、社会インフラとしての機能を帯びるに至りました。
本レポートでは、コンサルティングファームの「種類・分類」を網羅的に詳述するとともに、個人の「志向性」と「ファームの特性」がいかに適合するか(Fit)を、2025年の最新採用動向と合わせて徹底的に分析します。特に、急速に変化する市場環境において、各ファームがどのような人材を求めているのか、また求職者が自身のキャリアをどのように設計すべきかについて、多角的な視点から論じます。
1 2025年の市場環境と「採用厳格化」の現実
2025年現在、コンサルティング業界の採用動向には、パンデミック以降の拡大基調とは異なる明確な変化が生じています。2020年から2022年頃まで続いた「未経験者の大量採用(ポテンシャル採用)」の波は落ち着きを見せ、各ファームは採用基準を厳格化させるフェーズへと移行しました。
この変化の背景には、以下の3つの要因が存在します。
- クライアント企業の成熟: クライアント企業自身がDXや戦略策定の経験を積み、コンサルタントに対する要求水準が「一般的な戦略論」から「実装可能な具体的成果」へと高度化したこと。
- 経済環境の不透明性: 物価上昇や金利変動、円安などのマクロ経済要因により、企業が投資対効果(ROI)を厳しく精査するようになり、コンサルティングフィーに見合う即戦力が求められるようになったこと。
- 領域の融合と複雑化: 経営戦略とデジタル技術、人事戦略とデータ分析など、従来の領域区分が融解し、単一のスキルセットでは対応できないプロジェクトが増加していること。
これらの要因により、2025年の転職市場においては、単に「若くて地頭が良い」だけでは内定を獲得することが困難になりつつあります。その代わりに、特定の業界知識、実務経験、あるいは先端技術への深い理解を持つ「専門性」と、それをコンサルティングの文脈で活かせる「応用力」が強く求められています。
🔗未経験からコンサル業界へ|コンサルタントの種類と未経験者が狙い目の領域|なぜ今、未経験者の採用が増えているのか?
コンサルティングファームの体系的分類と機能解析
コンサルティングファームは、その起源や主要なクライアント、提供するサービスの重心によって大きく6つのカテゴリに分類されます。しかし、2025年の現在、これらの境界線は曖昧になりつつあり、相互に領域を浸食し合う「カオス」な状態にあるとも言えます。それでもなお、各ファームのDNAとも言える核となる機能や文化は維持されており、キャリア選択においてはその違いを理解することが不可欠です。
以下の表は、主要なファーム分類とそれぞれの特性を比較したものです。

1 戦略系コンサルティングファーム:企業の羅針盤
戦略系ファームは、クライアント企業の経営層(CEO、取締役会)に対して、企業の将来を左右する重大な意思決定を支援します。
- 機能的特徴: 彼らの最大の武器は「論理的思考力」と「仮説構築力」です。市場データや競合分析に基づき、クライアントが取るべきポジショニングやM&A戦略、新規市場参入の是非について提言を行います。
- 2025年の潮流: 従来は「綺麗な戦略を描いて終わり」と批判されることもありましたが、近年では「成果コミットメント」が強く求められるようになっています。そのため、デジタル領域への進出や、投資ファンド(PE)と連携した投資実行支援など、実効性を担保するためのサービスラインを拡充しています。
- 人材要件: 極めて高い知的能力が求められることは変わりませんが、それに加えて、クライアントの懐に入り込み、実行を促すための高度なコミュニケーション能力や、特定の産業(ヘルスケア、エネルギーなど)に対する深いインサイトを持つ人材の価値が高まっています。
2 総合系コンサルティングファーム:変革の実行部隊
総合系ファームは、戦略の策定から業務プロセスの設計、ITシステムの導入・運用、さらにはアウトソーシング(BPO)まで、企業の変革プロセスをワンストップで支援します。
- 機能的特徴: その名の通り「総合力」が特徴です。数千人から数万人規模のコンサルタントを抱え、業界別(インダストリー)と機能別(コンピテンシー)のマトリクス組織を形成しています。これにより、大規模なグローバルプロジェクトや、複雑なシステム統合案件に対応可能です。
- クロスファンクショナルな価値: 例えば「銀行のDX」というテーマであれば、金融業界の専門家、ITアーキテクト、デジタルマーケティングの専門家、チェンジマネジメント(組織変革)の専門家が一つのチームを組成します。多様なバックグラウンドを持つ人材が協働することが日常であり、キャリアの多様性も担保されています。
3 ITコンサルティングファーム:テクノロジーとビジネスの架け橋
ITコンサルティングファームは、経営課題をデジタル技術によって解決することに特化しています。
- SIerとの違い: しばしばシステムインテグレーター(SIer)と混同されますが、ITコンサルタントの起点は「技術」ではなく「経営課題」にあります。「どのようなシステムを作るか(How)」の前に、「なぜそのシステムが必要か、それによってどのようなビジネス価値が生まれるか(Why/What)」を定義することに重きを置きます。
- 役割の進化: クラウド、AI、IoTなどの技術進化に伴い、IT戦略は経営戦略そのものとなりつつあります。そのため、ITコンサルタントには、最新技術を目利きする力だけでなく、それをビジネスの言葉に翻訳して経営層に説明する能力が不可欠となっています。
4 FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス):資本の論理の番人
主に会計系ファームを母体とし、財務(ファイナンス)の視点から企業価値向上を支援します。
- 主要業務: M&Aのアドバイザリー(FA)、デューディリジェンス(DD)、企業価値評価(バリュエーション)、事業再生、不正調査(フォレンジック)などが主要なサービスです。
- プロフェッショナリズム: 企業の存亡や巨額の資金移動に関わるため、ミスが許されない緊張感のある環境です。会計士や税理士、投資銀行出身者が多く在籍しており、特定の専門スキル(財務会計、法務知識)がダイレクトに評価される領域です。
5 シンクタンク系ファーム:政策と技術のハイブリッド
日本独自の発展を遂げた形態であり、大手金融機関や商社グループに属することが一般的です。
- 二面性: 多くのシンクタンクは、官公庁向けの「調査・研究・政策提言」部門と、民間企業向けの「ITコンサルティング・システム構築」部門の二つの顔を持っています。
- 社会的意義: 経済白書の作成支援や、国家プロジェクト(スマートシティ、マイナンバー関連など)の調査受託など、公共性の高い案件に関与できる点が大きな魅力です。また、親会社の安定した顧客基盤を持つため、長期的な視点での研究や開発に取り組みやすい環境があります。
6 組織人事コンサルティングファーム:人的資本経営のパートナー
企業の最も重要な資産である「人」と「組織」に関する課題解決を専門とします。
- 近年の需要増: 働き方改革、ジョブ型雇用への移行、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進、そして人的資本の情報開示義務化など、人事領域の課題は経営アジェンダの上位に位置しています。
- 業務範囲: 従来の人事制度設計(等級・報酬・評価)に加え、次世代リーダーの育成、M&A後の組織文化統合(カルチャーPMI)、従業員エンゲージメントの向上など、心理学や行動科学の知見を用いたコンサルティングが増加しています。
業務内容の深層分析と得られるスキルセット
コンサルタントの仕事は「スライドを書くこと」ではありません。本質は「クライアントが自力では解決できない課題を解決すること」にあります。ここでは、ファームタイプごとの具体的な業務プロセスと、そこで磨かれるスキルについて詳述します。
1 プロジェクトのライフサイクル
多くのコンサルティングプロジェクトは、以下のフェーズを経て進行します。
- 問題発見・定義: クライアントへのヒアリングや現状分析を通じ、「何が真の問題か(As-Is)」を特定する。
- 仮説構築: 問題の原因と解決策について、初期的な仮説を立てる。
- 検証・分析: データ分析、インタビュー、文献調査などを通じて仮説を検証する。
- 解決策の策定: 検証結果に基づき、実行可能な解決策(To-Be)を設計する。
- 実行支援: 解決策の実装、定着化、効果測定を行う。
各ファームタイプにより、どのフェーズに重きを置くかが異なります。戦略系は1〜4に集中し、総合系やIT系は4〜5に長い時間を費やす傾向があります。
2 戦略系ファームで得られる「構造化思考」
戦略系ファームでの業務は、圧倒的な情報量の中から本質を見抜く訓練の連続です。
- ゼロベース思考: 過去の慣習や既存の枠組みにとらわれず、白紙の状態から最適解を導き出す思考法が身につきます。
- トップマネジメント視点: 常にCEOの視座で物事を考えることが求められるため、若手であっても経営全般(ヒト・モノ・カネ・情報)を俯瞰する視点が養われます。
- 耐圧性と胆力: 短期間で高額なフィーに見合う成果を出さなければならないプレッシャーの中で、知的タフネスと精神的な胆力が鍛えられます。
3 総合系・IT系ファームで得られる「変革推進力」
実行支援を主とするファームでは、戦略を絵に描いた餅に終わらせず、現実のものとするための泥臭い調整能力が磨かれます。
- プロジェクトマネジメント(PMO)スキル: 多様なステークホルダー(経営層、現場、ベンダーなど)の利害を調整し、プロジェクトをゴールに導くための管理能力は、どの事業会社に行っても通用するポータブルスキルです。
- テクノロジー活用力: 最新のデジタルツールやプラットフォーム(SAP, Salesforce, AWSなど)の実装経験を通じて、テクノロジーをビジネスにどう適用するかという実践知が得られます。
- 現場感とリアリティ: 現場の抵抗や業務プロセスの細部と向き合うことで、机上の空論ではない、実行可能な変革をデザインする力が身につきます。
4 パブリックセクター・シンクタンクで得られる「社会構想力」
官公庁向けプロジェクトでは、一企業の利益を超えた、社会全体の最適化を考える視点が求められます。
- 政策形成プロセスへの理解: 法律や規制がどのように作られ、社会に実装されていくかというプロセスを体験できます。これは、規制産業(エネルギー、金融、医療など)でのキャリアにおいて強力な武器となります。
- マクロ分析力: 統計データや経済指標を用いて社会トレンドを読み解く力は、シンクタンクならではの専門性です。
志向性別:あなたに最適なファームタイプの適性診断
「コンサルになりたい」という漠然とした動機では、入社後のミスマッチ(リアリティショック)を招くリスクがあります。自身の性格、価値観、キャリアのゴールに基づき、どのファームが「Fit」するかを見極める必要があります。以下に、5つの主要な志向性タイプと推奨ファームを分析します。
1 Type A: 知的アスリート型(Intellectual Athlete)
- 特徴: 知的好奇心が極めて強く、難解なパズルを解くことに快感を覚える。正解のない問いに対して、論理を積み上げて独自の答えを導き出すことが好き。長時間労働やプレッシャーよりも、退屈な作業を嫌う。
- 推奨ファーム: 戦略系ファーム、シンクタンク(研究職)
- 適合理由:
- 自身の頭脳そのものが商品となる環境です。「なぜ?」を5回繰り返すような深掘りが日常的に求められます。
- 若いうちから企業のトップイシューに触れられるため、知的な成長速度を最優先する人材に最適です。
- 一方で、現場での泥臭い人間関係の調整や、長期的な運用保守といった業務には関心が薄い傾向があるため、実行部隊を持つファームでは物足りなさを感じる可能性があります。
2 Type B: 変革の請負人型(Change Agent)
- 特徴: 考えるだけでなく、実際に世の中や企業が変わっていく手応えを感じたい。チームで一つの大きな目標に向かってプロジェクトを進めることにやりがいを感じる。現場の人々と対話し、納得感を持って動いてもらうプロセスを重視する。
- 推奨ファーム: 総合系ファーム、組織人事系ファーム
- 適合理由:
- 戦略策定から実行までを一気通貫で支援できるため、「自分が考えた戦略がどうなったかわからない」というフラストレーションがありません。
- 多様な専門家とチームを組むため、協調性やリーダーシップを発揮できる場が多くあります。
- 事業会社出身者が、前職での実務経験(営業、経理、企画など)を直接活かしやすいのもこのタイプです。
3 Type C: テクノロジー・ビジネス通訳型(Tech-Biz Translator)
- 特徴: 新しい技術が好きだが、コードを書くだけでなく、その技術を使ってどのようなビジネスインパクトが出せるかに関心がある。エンジニアとビジネスサイドの板挟みになった経験があり、そのギャップを埋めることに価値を感じる。
- 推奨ファーム: ITコンサルティングファーム、総合系(デジタル部門)
- 適合理由:
- SEやプログラマーからのキャリアチェンジとして最も自然かつ高待遇が期待できるルートです。
- 「技術がわかる経営参謀」としてのポジションは、DX全盛の現代において最も市場価値が高い属性の一つです。
- 要件定義や設計といった上流工程の経験が、そのままコンサルティングワークに直結します。
4 Type D: 公共・社会貢献型(Social Impact Creator)
- 特徴: 企業の利益追求だけでなく、国や地域の課題解決に貢献したいという強い意志を持つ。公務員としての限界を感じているが、公共への奉仕精神は持ち続けている。長期的な視点で社会インフラを支えたい。
- 推奨ファーム: シンクタンク、総合系(パブリックセクター)
- 適合理由:
- 官公庁案件が豊富であり、自身の経験や知識が直接的に社会課題解決に結びつきます。
- 行政特有の言語や商習慣(入札プロセス、予算制度など)を理解していることは、民間出身者にはない圧倒的な強みとなります。
5 Type E: プロフェッショナル職人型(Deep Expert)
- 特徴: 特定の領域(財務、会計、リスク管理、人事制度など)において、誰にも負けない専門知識を身につけたい。汎用的なスキルよりも、特定の資格や専門性が評価される世界で生きていきたい。
- 推奨ファーム: FAS(財務系)、特化型ブティックファーム(医療、SCMなど)
- 適合理由:
- 専門性が明確に定義されており、その深さが報酬や評価に直結します。
- M&Aや企業再生など、企業の命運を分けるシビアな局面に関与するため、高い倫理観と専門職としての矜持を持つ人材に適しています。
出身業界別:キャリアトランジションの成功戦略
コンサルティング業界への転職は、出身業界によって「活かせる強み」と「乗り越えるべき壁(Unlearning)」が異なります。ここでは主要な出身母体ごとの分析を行います。
1 銀行・証券・金融機関出身者
銀行員からの転職は、コンサルティング業界において伝統的に多いパターンであり、多くの成功事例があります。
- 活かせる強み:
- 財務リテラシー: 決算書を読み解き、企業の健全性や課題を数値から把握する能力は、基礎スキルとして極めて高い水準にあります。
- 対人折衝力: 融資先や富裕層顧客といった、気難しい相手との信頼関係構築経験は、クライアントワークにおいて直に活きます。
- ストレス耐性・規律: 高いコンプライアンス意識と、組織人としての規律、ハードワークへの耐性は、コンサルタントとしても信頼される要素です。
- 乗り越えるべき壁:
- 減点主義からの脱却: 銀行の「ミスをしない」文化から、コンサルの「仮説を出して検証する(間違っても修正する)」文化へのマインドセット転換が必要です。
- ソリューションの柔軟性: 既存の金融商品を売るのではなく、課題に合わせて解決策をゼロから作るというプロセスに慣れる必要があります。
- 特定ファームへの親和性: 金融業界の知見を活かせる「金融グループ(FIG)」や、M&A関連の「FAS」、事業再生案件などが狙い目です。
2 SE・SIer・エンジニア出身者
IT需要の爆発的増加に伴い、エンジニアからコンサルタントへの転身は現在最もホットなルートです。
- 活かせる強み:
- 技術的知見: システム開発の現場を知っていることは、絵に描いた餅にならない現実的なDX戦略を立案する上で決定的な強みです。
- 論理的思考力: プログラミングやシステム設計で培ったロジックの組み立て力は、コンサルティングの論理構成と親和性が高いです。
- プロジェクト経験: PM/PLとしての進捗管理や課題管理の経験は、そのままコンサルティングプロジェクトのマネジメントに転用可能です。
- 乗り越えるべき壁:
- 「How」から「Why」へ: 「どう作るか」ではなく「なぜ作るか」「投資対効果はあるか」という経営視点への視座の転換が求められます。
- コミュニケーションの抽象度: 技術用語を使わずに、経営層に対してビジネス上のメリット・デメリットを説明する「翻訳能力」が必要です。
- 曖昧さへの耐性: 仕様が決まっていない段階で議論を進めることに対するストレスを克服する必要があります。
3 公務員・官公庁出身者
行政のデジタル化や官民連携(PPP/PFI)の推進により、公務員出身者の市場価値は急上昇しています。
- 活かせる強み:
- ドキュメンテーション力: 膨大な資料を正確に読み込み、整合性のある文書を作成する能力は、コンサルタントの基礎能力と合致します。
- ステークホルダー調整力: 多様な利害関係者(政治家、業界団体、市民など)の意見を調整し、合意形成を図るスキルは、大規模プロジェクトで重宝されます。
- 公共政策の知識: 法律、規制、補助金などの仕組みに精通していることは、民間企業が新規事業を行う上での重要なアドバイスとなります。
- 乗り越えるべき壁:
- スピード感とコスト意識: 予算消化型の思考から、利益創出型の思考への転換が必要です。また、意思決定のスピード感も民間とは大きく異なります。
- スライド作成スキル: 公務員特有の「ポンチ絵」やWord文化から、コンサル流のPowerPoint作成技法(メッセージライン、チャート活用など)への適応が必要です。
4 事業会社(メーカー・商社・小売り等)出身者
- 活かせる強み: 特定業界の商流、現場のリアリティ、製品知識。これらは「インダストリーコンサルタント」として即戦力になります。
- 乗り越えるべき壁: 「自社の常識」が「業界の常識」ではないことを認識し、客観的な視点でクライアント(時には競合他社であった企業)を分析する姿勢が求められます。
2025年以降の採用トレンドと市場展望
1 「35歳限界説」の真実と変容
かつてコンサルティング業界には「未経験での転職は35歳まで」という不文律(35歳限界説)が存在しました。しかし、2025年現在、この説は形を変えています。
- 限界説の崩壊: 単純に年齢で足切りされることは少なくなりました。労働人口の減少とプロジェクトの多様化により、40代であっても特定領域の深い知見があれば採用されるケースが増えています。
- 新たなハードル: 一方で、「ポテンシャル採用」の限界年齢は下がっているとも言えます。30代後半以降で未経験の場合、「即戦力となりうる具体的な実績(大規模PM経験、新規事業立ち上げ、専門資格など)」がなければ、書類選考を通過することは困難です。つまり、「年齢の壁」は「スキルの壁」へと置き換わっています。
- マネジメント能力の重視: 35歳以上の転職者には、自身がプレイヤーとして動くだけでなく、若手コンサルタントを指導・管理し、プロジェクトを回すマネージャーとしての資質が強く求められます。
2 領域特化と「タグ付け」の重要性
「何でもできます」というゼネラリストの市場価値は低下しています。代わりに、「XX業界のサステナビリティ対応なら第一人者」「YY領域のAI導入における法的リスクの専門家」といった、明確な「タグ」を持つ人材が争奪戦となっています。
- 採用戦略の厳格化: 各ファームは採用計画において、「頭数」を揃えるフェーズから、「特定のスキルセットを持つ人材」をピンポイントで狙うフェーズ(領域別採用)に移行しています。
- 求職者の戦略: したがって、職務経歴書においては、汎用的なスキルを羅列するのではなく、自身の経験がどのコンサルティング領域(インダストリー×コンピテンシー)にフィットするかを仮説立て、戦略的にアピールする必要があります。
3 デジタル×X(掛け合わせ)の時代
もはや「デジタル担当」という特別な枠は消滅しつつあります。戦略コンサルタントであれ、人事コンサルタントであれ、デジタルの知見は「読み書きそろばん」と同様の基礎教養となりました。
- 具体的な事例: 金融機関のDX事例を見ても、単なるシステム導入ではなく、データ分析組織の立ち上げや、デジタル人材の育成プログラムの構築など、組織と人の変革がセットになっています。
- 求められる人材像: 自身の専門領域(金融、製造、人事など)を持ちつつ、そこにデジタル技術をどう掛け合わせれば課題が解決できるかを描ける「ハイブリッド人材」が、2025年以降のコンサルティング業界で最も高く評価されるでしょう。
結論:キャリアの「Fit」を見極めるための羅針盤
本レポートを通じて分析してきた通り、コンサルティング業界は多様化と専門化を同時に進行させています。もはや「コンサルに行けばキャリアが安泰」という単純な時代ではありません。重要なのは、自身の志向性とファームの特性が高い次元で合致(Fit)することです。
1 キャリア戦略の提言
- 自己分析の徹底: 自身が「知的探求」に喜びを感じるのか、「現場での変革」にやりがいを感じるのか、あるいは「専門性の追求」を志すのか。この根本的な問いに対する答えが、ファーム選びの起点となります。
- リアリティの理解: 華やかなイメージの裏にある、地道な調査、終わりのない資料修正、クライアントからの厳しい要求といった「コンサルの日常」を理解し、それでもなお挑戦したいという覚悟が必要です。
- エージェントの活用: 業界の内部事情は日々変化しています。求人票には書かれていない「部門ごとの雰囲気」や「実際のプロジェクト事例」を知るためには、信頼できる専門のエージェントや、業界OB/OGからの情報収集が不可欠です。
2 総括
2025年のコンサルティング業界は、採用基準の厳格化という高いハードルを課していますが、それは裏を返せば、真の実力を持つプロフェッショナルにとっては、かつてないほど魅力的な活躍のフィールドが広がっていることを意味します。
自身のキャリアを「コンサルティング」という機能を通じて社会に還元したいと願う全ての人にとって、本レポートが適切な航路を選ぶための羅針盤となることを願います。
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参考URL
【2025年版】コンサルティング業界の採用動向は? | ハイクラス転職のフォルトナ
戦略コンサルタントとは?仕事内容や年収、必要なスキル、魅力を解説 | コンサルネクスト.jp
【2024年最新版】コンサルティングファームカオスマップを徹底解説
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DX事例30選:9つの業界別に紹介~有名企業はどんなDXをやっている?~【2025年最新版】 | DOORS DX
●監修者
bloom株式会社 代表取締役 林 栄吾
慶應義塾大学を卒業後、株式会社ベイカレント・コンサルティングに入社。 事業戦略の策定・実行支援を中心としたコンサルティング業務に従事。
同社ではアカウントセールスマネージャーとして新規顧客開拓、メンバー育成を担う傍ら、採用責任者・人事責任者を歴任し、戦略コンサルティングと人事・採用の両面で豊富な実績を持つ。
独立後はbloom株式会社を設立。代表取締役として、コンサルティングと人事で培った知見を基に、不動産業および人材紹介業を統括している。