サマリー
- 日銀は2026年9月に政策金利を1.25%へ引き上げ、31年ぶりの水準になりました。利上げが続く見通しの中で、ファイナンスと運用の力を持つアセットマネージャーの価値が高まっています。
- 不動産私募ファンド市場は、2026年6月末時点で推計52.2兆円。半年間で約5.1兆円(+10.8%)増え、拡大のペースはむしろ加速しています。
- アセットマネージャーの年収は一般に600万〜700万円程度で、経験者やリーダー層は800万〜1,500万円以上、外資系や大手投資銀行系では1,000万円超も狙えます。
- 金利上昇下で武器になるのは、リファイナンス交渉、キャッシュフローの管理、賃料増額によるNOI成長、出口分析、関係者の調整力の5つです。
- 未経験からの挑戦は容易ではありませんが、PM・収益物件の仲介・金融機関の不動産関連部署を経由するルートがあり、証券化マスターなどの資格も強い味方になります。
不動産ファンドへの転職を考えながら、「金利が上がる局面でも、このキャリアは伸びるのだろうか」と気になっていませんか。
2026年6月と9月に日銀が相次いで利上げを実施し、政策金利は1.25%まで上昇しました。ところが足元の市場を見ると、不動産私募ファンドの運用資産は拡大を続け、投資家の間にも不動産投資を広げようとする動きが出ています。金利のある世界は、借入と運用の巧拙が成果に表れやすい時代であり、実力あるアセットマネージャーが評価を高められる環境でもあります。
本記事では、2026年に公表された最新のデータをもとに、金利上昇時代の不動産ファンドの追い風、アセットマネージャーの年収レンジ、そして今求められる運用スキルを整理します。転職の一歩を踏み出す判断材料として、ぜひ最後までご覧ください。
🔗金利ある世界での不動産ファンド戦略!2026年の市場変化に対応できる人材の共通点
金利1.25%は31年ぶり!「金利ある世界」は運用力が評価される時代
結論からお伝えすると、金利上昇は、運用力を磨いたアセットマネージャーにとって評価を高める追い風になりえます。日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げました。1995年以来、31年ぶりの水準です。
利上げのペースも上がりました。前回6月からの間隔は3カ月で、植田総裁の就任後では最短です。日銀は決定文で、物価が2%を上回って上振れするリスクに言及し、利上げを続ける方針を示しています。ピクテ・ジャパンの会合レビューも、中東情勢、AI関連需要、円安が物価の押し上げ要因になりうると整理しており、「金利ある世界」は当面続くと見ておくのが現実的です。
不動産ファンドの多くは、投資家のエクイティに金融機関からの借入(デット)を組み合わせて物件を取得します。借入金利が上がれば、DSCR(元利金返済余裕率)やICR(利払い余裕率)の管理、借換え(リファイナンス)の設計が一段と重要になります。裏を返せば、ここに強いアセットマネージャーほど、投資家やレンダーから頼られる存在になれるということです。
「金利上昇=不動産は逆風」は過去の話?機関投資家が見ている追い風
三井住友トラスト基礎研究所が2026年2月に公表した「不動産投資に関する調査2025」は、年金基金と機関投資家に、金利の先行き不透明感を受けた投資方針の変更を尋ねています。大半は「変更予定なし」でしたが、「既に変更した」「変更予定あり」を合わせると年金基金で16%、機関投資家で35%。変更内容の上位は「不動産投資を拡大する」「物件タイプを拡大する」でした。同調査は、金利上昇のマイナス影響以上に、物価上昇に伴う賃料上昇が期待できる環境になったためと分析しています。
同調査では、年金基金が今後投資を開始・増加させたい対象として、国内不動産のクローズドエンド型私募ファンドを挙げた割合が25%と、調査開始以来の最高値になりました。機関投資家の運用資産に占めるJ-REITの割合も、2013年以来の高水準です。
市場の見方も前向きです。東洋経済オンラインは、J-REITがインフレという新たな環境を味方につけ、成長サイクルに入りうると論じています。野村證券のストラテジストは、2026年6月の利上げ後の戦略として、不動産株を注目セクターに位置づけました。
不動産私募ファンド市場は52.2兆円へ!半年で10.8%拡大した最新データ
アセットマネージャーが活躍する市場の大きさを、最新のデータで確認しましょう。2026年9月18日に公表された、不動産証券化協会(ARES)と三井住友トラスト基礎研究所による「不動産私募ファンドに関する実態調査(2026年7月調査)」では、2026年6月末時点の不動産私募ファンド(私募REIT・グローバルファンドを含む)の市場規模が、運用資産額ベースで推計52.2兆円となりました。前回調査(2025年12月末)の47.1兆円から約5.1兆円、10.8%の増加です。
増加幅は前回調査の4.9%から大きく拡大しました。運用資産を拡大させた運用会社の数は縮小させた会社の数を大幅に上回り、国内系・外資系の双方で運用資産を大きく増やした会社も相当数あったといいます。
国土交通省の「不動産証券化の実態調査」でも、証券化の対象となった不動産または信託受益権の資産総額(推計)は、令和3年度末の約46.8兆円から令和7年度末の約73.4兆円へ、4年間で約1.6倍に拡大しました。令和7年度にリートと不動産特定共同事業で取得された資産額は約2.8兆円で、用途別ではオフィス24.1%、宿泊施設20.5%、住宅18.7%の順でした。運用対象となる資産が増え続けていることは、アセットマネージャーの活躍の場が広がっていることを意味します。
アセットマネージャーの仕事とは?取得・運用・売却の3フェーズ
アセットマネージャー(AM)は、投資家から預かった不動産の価値を最大化し、収益を向上させる役割を担います。仕事は大きく「取得(アクイジション)」「期中運用」「売却(ディスポジション)」の3フェーズに分かれます。取得では物件のソーシングやデューデリジェンス、ファンド組成、資金調達のアレンジを行います。期中運用では運用計画の策定、賃料の適正化、プロパティマネージャー(PM)への指示、資金計画や配当管理、投資家への報告を担います。売却では出口戦略を描き、買い手との交渉から分配までを担当します。
PMが現場の賃貸管理を担うのに対し、AMは「どう投資し、どう価値を高めるか」という戦略を担います。物件のライフサイクル全体に関わるため、不動産と金融の両面で専門性を磨ける点が、この仕事の大きな魅力です。
アセットマネージャーの年収はいくら?高収入を狙えるレンジ
転職を考える方が最も気になるのが年収でしょう。コトラが2026年8月に更新した転職ガイドによると、不動産業界のアセットマネージャーの年収は、一般的には600万〜700万円程度です。経験豊富な方やリーダー経験がある方は800万〜1,500万円、あるいはそれ以上を期待でき、外資系ファンドや大手投資銀行系では1,000万円を超える水準も多く見られるとされています。
運用成果に応じたボーナスやインセンティブが支給される企業も多く、実力が年収に反映されやすい職種です。経験が浅い段階では突出して高い年収ではなくても、知識と経験を積むほど大幅な年収アップが期待できます。
企業タイプによる特徴もあります。外資系は成果主義で年収水準が高く、グローバルな案件に携われます。日系大手や上場企業系は福利厚生が充実し、安定した環境で経験を積めます。独立系は少数精鋭で、一人ひとりの裁量が大きいのが特徴です。キャリアパスも広く、ファンドマネージャー、不動産コンサルタント、デベロッパー、PEファンドなどへ道が開けます。

金利上昇は「実力を示すチャンス」!選別の時代に評価される人材とは
ここで、市場の意外な側面にも触れておきましょう。それは、金利上昇によって案件ごとの優劣がはっきりしてくることです。健美家の2026年の分析記事は、「金利ある世界」では賃料成長力、稼働率、借入条件、出口価格の前提がより厳しく問われ、表面利回りではなく実質的なキャッシュフローの耐性が投資判断の中心になると述べています。利回りの低い物件や借入依存度の高い案件、出口に強気な前提を置いた開発案件には価格調整の圧力がかかりやすい一方、賃料上昇力のある都心住宅や好立地のオフィス、インバウンド需要を取り込むホテルは相対的に底堅いと見ています。
ARESと三井住友トラスト基礎研究所の調査も、金利先高感などを背景に、国内投資家の一部で慎重な姿勢が増えたと指摘しています。ただし海外投資家では、ほとんどの属性で投資額の「増加」が「減少」を上回りました。資金の流れが選別的になるほど、案件を見極め、キャッシュフローを守り、価値を高められるアセットマネージャーの存在感は増します。「どの物件を、どう運用するか」で差がつく時代は、実力のある人材にとってチャンスです。
売却益頼みから運用力勝負へ!イールドギャップ縮小が生む新しい評価軸
もう一つの変化が、リターンの源泉です。日本不動産研究所の「不動産投資家調査」(2025年10月現在)を野村不動産ソリューションズが整理した記事によると、キャップレート(期待利回り)はおおむね横ばいで、丸の内・大手町のAクラスビルは6期連続の横ばいでした。金利やリスクフリーレートの上昇がキャップレートの低下を抑えており、イールドギャップ(不動産利回りと金利の差)は過去に類を見ない水準まで縮小しているといいます。同記事は、投資家が賃料上昇による純収益の成長とキャピタルゲインでリターンを確保する戦略を描いているとも指摘しています。
利回り低下による値上がりを当てにしにくいのであれば、リターンの主役は運用によるNOI(純収益)の成長です。賃料を引き上げ、稼働率を保ち、コストを最適化する。地道な運用で価値を高められる人材が、投資家から選ばれるようになります。実際、三井住友トラスト基礎研究所の調査では、機関投資家が検討できる運用スタイルとして、バリューアッド型が28%から34%へ増加しました。価値を高める運用への期待が高まっているのです。
金利上昇時代に武器になる運用スキル5つ
では、具体的にどのようなスキルが武器になるのでしょうか。業務内容と市場環境を踏まえると、次の5つが重要と考えられます。
1.リファイナンスと金利コストの管理力
満期が近づいた借入について、貸し手と条件を交渉し、借換えを成立させる力です。固定・変動の選択や金利ヘッジの要否も含め、資金調達を設計できる人材は、投資家とレンダーの双方から信頼されます。
2.キャッシュフローのストレステスト力
DSCRやLTV(借入比率)が、金利上昇や稼働率低下でどこまで変動するかを試算し、先回りして手を打つ力です。「金利が0.5%上がったらどうなるか」を数字で説明できることが、強みになります。
3.賃料増額とバリューアップの実行力
NOIの成長が成果の柱になる以上、賃料改定の交渉、リーシング戦略、改修によるバリューアップをPMと連携して実行する力が欠かせません。
4.出口戦略とキャップレート感応度の分析力
売却時のキャップレートが想定より上がっても元本を守れるか、保守的な前提で複数のシナリオを検証する力です。慎重な出口設計ができる人材は、安定運用の担い手として評価されます。
5.投資家・レンダー・PMを動かす調整力
投資家、レンダー、信託銀行、PM会社など立場の異なる関係者の利害を調整し、プロジェクトを前に進めるコミュニケーション力は、数字の分析力と並ぶ必須スキルです。三井住友トラスト基礎研究所の調査でも、機関投資家が不動産投資に必要なこととして「不動産運用会社の運用能力」が上位に挙がっています。
有利な資格は?不動産鑑定士・証券化マスター・証券アナリスト
必須の資格はありませんが、コトラの解説では、不動産鑑定士、証券アナリスト、ARES認定マスター(不動産証券化協会認定マスター)、宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスターなどが有利な資格として挙げられています。とくに証券化マスターは、証券化の組成・管理、会計、ファイナンス、投資分析の知識を示せる点で、不動産と金融を横断するAMの仕事と相性が良い資格です。
未経験でも不動産ファンドに転職できる?現実的な3つのルート
結論として、未経験からいきなりアセットマネージャーになるのは簡単ではありません。求人数が少なく、不動産や金融の専門知識と実務経験が前提になるケースが多いためです。ただし、道は閉ざされていません。コトラの解説では、30代前半までなら育成を前提としたポテンシャル採用の機会があり、関連業界での実務経験が豊富な方は40代以上でもチャンスがあるとされています。現実的なルートは次の3つです。
- プロパティマネジメント(PM)で経験を積む:賃料や運営コスト、テナント対応など、収益の現場を学べます。
- 不動産仲介・売買(特に収益物件)で経験を積む:ソーシング、バリュエーション、売買交渉のスキルがアクイジション業務に直結します。
- 金融機関の不動産関連部署で経験を積む:不動産融資やノンリコースローンの知識は、金利上昇局面のファイナンス業務で特に活きます。
転職を成功させるために今日からできる3つのアクション
- 経験を数字で棚卸しする:「稼働率を何%改善した」「何億円規模の取引に関与した」など、成果を数字で示せるようにします。
- 金利上昇シナリオを自分の言葉で語れるようにする:DSCRの変化、リファイナンス、出口のキャップレートといった論点を、具体例とともに説明できるよう準備します。
- 業界特化のエージェントを活用する:アセットマネジメントは募集が限られるため、運用スタイルや年収交渉の相場を把握したうえで進められます。
Q&A:不動産ファンド転職のよくある質問
Q.アセットマネージャーの年収はどのくらい?
A.一般的には600万〜700万円程度ですが、経験豊富な方やリーダー層は800万〜1,500万円以上が期待できます。外資系や大手投資銀行系では1,000万円を超える水準も多く見られます。年齢よりも、担当案件の規模と運用実績が年収を左右します。
Q.金利が上がっているいま、不動産ファンドへ転職しても大丈夫?
A.市場の追い風は十分にあります。私募ファンド市場は2026年6月末で推計52.2兆円と拡大を続けており、金利上昇でファイナンスに強い人材の価値も高まっています。転職先を選ぶ際は、運用資産のタイプや借入への依存度、運用戦略を確認しておくと安心です。
Q.未経験でもアセットマネージャーになれる?
A.難易度は高いものの、挑戦はできます。30代前半まではポテンシャル採用の可能性があり、PMや収益物件の仲介、金融機関で経験を積んでから挑戦するルートが現実的です。
まとめ
- 日銀は2026年9月に政策金利を1.25%へ引き上げましたが、金利のある世界はファイナンスと運用に強いアセットマネージャーの価値を高めます。
- 不動産私募ファンド市場は2026年6月末で推計52.2兆円に拡大し、半年で10.8%増えました。活躍の場は広がり続けています。
- 年収は一般に600万〜700万円、経験者は800万〜1,500万円以上、外資系や大手投資銀行系では1,000万円超も狙えます。
- 武器になるのは、リファイナンス、キャッシュフロー管理、賃料増額、出口分析、関係者調整の5つのスキルです。
- 未経験はPM・仲介・金融機関を経由するのが現実的。証券化マスターなどの資格と、業界特化エージェントの活用で一歩を踏み出せます。
不動産業界に少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。あなたのこれまでの経験の中に、きっと活かせる強みが眠っています。
不動産、金融転職に特化したサポートをしているbloom株式会社では、これまでのご経験をどのように新しいキャリアに繋げられるのか、丁寧にご説明させていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。
参考URL
- 日銀利上げ、1・25%に ペース最短3カ月に加速(2026年9月18日)(共同通信(熊本日日新聞掲載))
- 日銀9月会合:タカ派的利上げペースに円安で反応(2026年9月24日)(ピクテ・ジャパン)
- 不動産私募ファンドに関する実態調査 2026年7月調査(2026年9月18日)(不動産証券化協会(ARES)・三井住友トラスト基礎研究所)
- 「不動産投資に関する調査 2025年」調査結果(2026年2月20日)(三井住友トラスト基礎研究所)
- 不動産証券化の実態調査(令和7年度)(国土交通省)
- 日銀利上げ後の投資戦略 銀行株への注目を引き下げ、不動産株を注目セクターに(2026年6月17日)(野村證券)
- 「金利上昇=リート売り」は過去の遺物になりつつある…2026年のJリートが「買い」と言える3つの理由(東洋経済オンライン)
- 日銀の金融政策と不動産投資市場(金利ある世界の動向に関する分析)(健美家)
- キャップレートの動向 ~最新の不動産投資家調査より(2025年10月)~(2026年1月8日)(野村不動産ソリューションズ)
- 不動産アセットマネジメント転職完全ガイド(2026年8月31日更新)(コトラ(KOTORA JOURNAL))
監修者
bloom株式会社 最高執行役社長 (COO) 小田村 郷
慶應義塾大学を卒業後、三井不動産リアルティ株式会社に入社し、不動産仲介(リテール・法人)の第一線で実務経験を積む。
その後、トーセイ・アセット・アドバイザーズ株式会社に移籍。不動産ファンドのアセットマネジメント(AM)業務を専門に担当し、投資家サイドの高度な専門知識を習得する。
独立後、bloom株式会社に参画。最高執行役社長として、不動産仲介からアセットマネジメントまで、不動産業界の川上から川下までを熟知したプロフェッショナルとして事業全体を牽引している。