サマリー
- 国内コンサル市場は2025年に約8,822億円となり、2030年には約1兆4,064億円へ拡大する予測です。
- コンサルファームの公開求人は6,400件超と高水準で、専門性を持つ人材が高く評価される、準備した人に追い風の市場です。
- 生成AIでコンサルの仕事はなくならず、戦略立案から「実行・伴走支援」やAI活用支援へと、活躍の場が広がっています。
- 転職潜在層は55.2%。動き出せない理由の多くは情報不足で、業界を知ること自体が最初の一歩になります。
- 今すぐ転職しなくても、経歴の棚卸し・専門性の選択・情報収集の3つを始めれば、選択肢は確実に広がります。
「いつかは動くかもしれないけれど、今すぐ転職するつもりはない」。そんな状態で、コンサル業界の情報を集めることに意味はあるのでしょうか。
Sansan株式会社が2026年に実施した調査では、積極的に転職活動をしている人は7.6%にとどまる一方、転職に関心はあるものの動いていない「転職潜在層」は55.2%にのぼりました。動けない理由として「具体的に行きたい企業がない」「自分の経歴で通用するか自信がない」が上位に挙がっており、背景には情報の不足があります。
そこで本記事では、国内コンサル市場の規模、求人の動向、生成AIの影響、そして専門性が評価される採用の変化まで、市場の現在地を整理します。読み終えるころには、転職するかどうかにかかわらず、いま何を準備すべきかが見えてくるはずです。
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「今すぐ転職しない」のに、なぜコンサル業界を知っておくべきなのか?
結論から言うと、転職する予定がなくても、コンサル業界の理解には十分な意味があります。理由は大きく3つあります。1つ目は、自分の経験が転職市場でどう評価されるかを測る「物差し」になること。2つ目は、AIやDXの時代に企業がどんな課題に直面し、どんな人材に投資しているかを知る手がかりになること。3つ目は、将来「動く」と決めたときに、情報不足で判断を誤るリスクを減らせることです。
Sansanの調査によると、ビジネスパーソンの約74%が、生成AIの進化によってキャリアに不安を感じたことがあると回答しています。不安の内容で最も多かったのは「AIで求められるスキルの水準が高まっている」で59.0%でした。一方で、約66%はAI時代のキャリアをアップデートするための行動をすでに起こしており、その中身はAIの知識・スキル習得が71.0%で最多、転職活動は18.0%でした。
つまり、多くの人は「転職」という大きな決断の前に、まず学び直しや情報収集から始めています。コンサル業界の理解は、その情報収集の中でも市場全体の動きをつかむのに効率のよい題材です。コンサルティングファームは多様な業界の経営課題を扱っており、採用動向や案件テーマには、日本企業が何に投資しようとしているかが表れやすいためです。
転職等希望者は1,023万人で過去最多。「いつか動きたい」人が増えている今が、情報収集の好機
総務省統計局の労働力調査(詳細集計)によると、2025年の転職等希望者は1,023万人で、前年から23万人増え、比較可能な2013年以降で過去最多となりました。2025年10〜12月期平均でも1,045万人と、4期連続で増加しています。一方、2025年の転職者は330万人で、前年から1万人減り、2023年以降は330万人前後で推移しています。なお、この「転職等希望者」には、副業を希望する人も含まれる点には注意が必要です。
厚生労働省の令和7年「転職者実態調査」(2026年9月公表)では、転職者がいる事業所の割合は38.2%と、5年前の33.0%から上昇しました。転職は着実に身近になっており、「希望」を「行動」につなげる余地もそれだけ大きいといえます。
その背景を、Sansanの調査で転職潜在層に尋ねた結果から見てみます。最多は「忙しく時間を割けない」の35.2%ですが、次いで「現職に大きな不満がない」が32.4%、「具体的に行きたい企業がない」が31.8%、「自分のスキルや経歴で良い転職先が見つかるか自信がない」が29.0%でした。
後ろの2つに注目すると、「行きたい先が見えない」「自分が通用するかわからない」は、いずれも情報で解消できる課題です。業界の現在地を知ることは、この2つの壁を低くする最初の一歩になります。
国内コンサル市場は2025年に約8,822億円、2030年には1兆4,000億円超の予測
国内ビジネスコンサルティング市場は、どれくらいの規模なのでしょうか。IDCが2026年6月に公表した予測によると、2025年の支出額は約8,822億円で、2030年には約1兆4,064億円へ、年平均9.8%で拡大する見通しです。ITコンサルティングを含む国内コンサル市場全体でも、2025年の約1兆4,554億円から2030年には約2兆2,897億円へ拡大すると予測されています。
成長のけん引役は、企業のAI活用と変革需要です。生成AIやエージェンティックAIが「試す」段階から「変革する」段階へ移り、業務プロセス・データ基盤・組織体制を一体で見直す全社変革型の案件が増えています。複数年にわたる大型プログラムも広がっています。セグメント別では、AIエージェントの業務実装支援やERPのサポート終了対応、レガシーモダナイゼーションに伴う上流支援を背景に、業務改善コンサルティングが最も高い成長を示す見通しです。
人材にとって見逃せないのが、「人と組織」の変革支援です。IDCは、リスキリング、人的資本経営、ワークフォース変革、チェンジマネジメントといった領域で需要が拡大していると指摘しています。また、人材の供給不足を背景に案件単価が上昇していることも、成長要因の一つに挙げています。市場は拡大を続けており、コンサル業界の活躍の場は着実に広がっています。
コンサルの求人は6,400件超。いま採用されているのはどんな人材か?
求人のボリュームも高い水準が続いています。ハイクラス転職支援のコトラが2026年6月に更新した分析では、コンサルティングファームの公開求人は6,400件を超えています(分析対象は6,445件)。同社はこの状況を、業界の衰退ではなく、質的な転換を伴う拡大期と位置づけています。領域ごとの特徴は次のとおりです。
- 総合系:生成AIの実装、サプライチェーン再構築、人的資本経営・組織変革などの案件で採用が続いています。
- 戦略系:経営トップの意思決定に近い上流の案件が中心です。新規事業やサステナビリティ戦略、デジタル専門部隊の求人も広がっています。
- IT・デジタル系:データ基盤の構築やセキュリティ戦略など、人材の奪い合いが特に激しい領域です。
- M&A・FAS系:買収後の統合(PMI)や事業再生など、ディール後に価値を高めるフェーズの求人が厚くなっています。
- 特化型(ブティック):ESG・GXや製造業特化など、業界・機能に尖った専門性が求められます。
どの領域にも共通するのは、「何ができる人か」が以前より問われている点です。この点が、次に述べる採用の変化につながります。
生成AIでコンサルの仕事は「なくなる」のか?変わるのは価値の出し方
結論として、市場データを見る限り、コンサルの仕事そのものが消える兆しはありません。変わっているのは「どう価値を出すか」です。
ONE CAREER PLUSが2026年のコンサル業界予測として行ったインタビューでは、AIによって価値提供の仕方が変わる元年になるという見方や、総合系・IT系では実行支援への決定的なシフトが進むという見方が紹介されています。コトラの分析も同様に、クライアントがファームに求める役割は、戦略レポートを描くことから、現場を動かして成果を出すことへ移ったと指摘しています。
背景には、AIを前提にした全社変革の広がりがあります。IDCは、AIを核とした全社変革型の案件が増えるなかで、成長の中身がAIを前提とした提供モデルへ転換し、売上が人員数の伸びを上回るペースで拡大するファームも増えていると分析しています。AIを使いこなして価値を出せる人材は、これまで以上に求められる存在になります。
また、一部の企業が自社でDXや経営企画を進める「内製化」についても、コトラは、コンサル不要論ではなく、内製化そのものを支援する案件という新しい需要が生まれていると分析しています。
求人が多い今、チャンスをつかむ鍵は「専門性」。評価される人材の条件とは?
ここまでの数字を見ると、転職しやすい環境に思えるかもしれません。実際、市場にはチャンスが広がっています。そのチャンスをつかみやすいのは、自分の強みを具体的に説明できる人です。
コトラは、採用が「厳選・専門性重視」の段階に入り、ポテンシャルだけで採用される時代は落ち着いたと分析しています。特定の業界知識、IT・デジタル、財務などの専門性を持つ即戦力や、前職で突出した実績を持つ人材に需要が集中し、書類選考やケース面接の基準は高まっています。その分、条件に合う人には高い年収や待遇を提示してでも獲得しようとする動きが強まっています。同社の別の記事でも、マネージャー以上の即戦力層の需要は引き続き高いとされています。
これはコンサル業界に限った話ではありません。Sansanの調査では、AIの影響で自社の採用に変化があったと答えた採用担当者が76.4%にのぼりました。その内容は、「経験の浅い若手・ジュニア層よりも即戦力となるミドル・ハイクラス層を重視」が51.6%、「特定分野の専門性の高い人材を重視」が50.0%です。
「今すぐ転職しない」人の最大の強みは、準備に時間をかけられることです。専門性が評価される時代だからこそ、早く準備を始めた人ほど有利になります。
AI時代は経験と専門性の追い風。若手が早く成長できる環境も広がる
もう一つ注目したいのが、AIと人材の関係です。大和総研のレポートは、41カ国の多国籍企業を分析した研究を紹介しています。それによると、生成AIを導入した企業の拠点では、経験者の雇用が増え、若手の比率が下がりました。経験や専門性を持つ人材の価値が高まっている、ということです。同レポートは、若手が経験を積む場をどう残すかが今後の課題だとも指摘しており、企業側も育成の仕組みづくりを求められています。
コンサル業界でも、似た変化を指摘する声があります。「ビジネス+IT」に掲載された、コンサルティングファームでの経験を持つ筆者の寄稿は、基礎的な業務がAIに自動化された結果、若手にも難度の高い仕事が任されるようになり、求められる水準が以前より高くなっていると述べています。
見方を変えれば、早い段階から高度な仕事に挑戦でき、専門性や判断力を短期間で磨けるということです。AIを味方につけて成長を加速できる人にとっては、大きなチャンスになります。

コンサル業界の理解で広がる3つの選択肢
市場の現在地を理解すると、キャリアの選択肢は「転職するか、しないか」の二択ではなくなります。
選択肢1:コンサルファームに挑戦する
総合系、戦略系、IT系、FAS、特化型と入口は複数あり、事業会社の経験が活きる領域もあります。コトラによれば、総合系では事業会社での大規模システム導入の推進経験や業務改革の経験が高く評価されます。IT系ではSIerのSEやPMの経験者、特化型では特定の業界・機能に詳しい専門家が求められています。
選択肢2:事業会社に残り、コンサル的な力を磨く
コンサル出身者の主な転職先は、経営企画、DX推進、新規事業開発などです。コトラは、事業会社側がコンサル水準の待遇を用意するケースも増えていると説明しています。裏を返せば、課題を構造化して解く力は、ファームの外でも評価されるということです。今の職場でその力を磨くのも、立派な選択肢です。
選択肢3:「いつか動く」ために、時期を見て備える
市場は転換期にあります。焦って動く必要はありませんが、準備は今日から始められます。Sansanの調査でも、約66%がすでに何らかの行動を起こしています。動かないことと、備えないことは違います。
「今すぐ転職しない」人が今日から始める3つの準備
1. 職務経歴をプロジェクト形式で棚卸しする
コトラは、未経験者が書類選考で落ちる大きな原因として、前職の実績を事業会社の視点のまま書いてしまうことを挙げています。対策として、取り組みごとに「背景・課題」「自身の役割」「アクション」「定量成果」の形で整理することを勧めています。転職の予定がなくても、この棚卸しは自分の市場価値を知る近道になります。
2. 専門性の「とがり」を1つ決める
専門性が評価される時代に強いのは、「何ができる人か」を説明できる人です。業界知識、ITやデータの活用、財務・会計、プロジェクト推進など、自分の経験から伸ばせる軸を1つ決めて意識的に磨いてみてください。
3. 話を聞く場を持つ
Sansanの調査では、転職潜在層の89.4%が、魅力的な話があれば聞いてみたい、あるいは内容を問わず一度は聞いてみたいと答えています。転職を決めていなくても、業界に詳しい第三者と話すことで、自分の経歴の評価や市場の最新動向を確認できます。
Q&A
コンサル未経験でも転職できますか?
可能性は十分にあります。ただし、ポテンシャルだけで評価される時代ではなく、前職での専門性や実績が重視される傾向です。コトラによれば、総合系では事業会社での業務改革やシステム導入の推進経験、IT系ではSIerでのSEやPMの経験などが評価されています。まずは自分の経験がどの領域に結びつくかを整理することが大切です。
今すぐ転職する気がなくても、相談してよいですか?
問題ありません。Sansanの調査でも、転職潜在層の約89%が、スカウトなどのきっかけがあれば話を聞いてみたいと回答しています。情報収集の段階で相談することで、自分に合う領域や準備すべきことを早めに把握できます。
コンサルの年収はどのくらいですか?
コトラが示す目安では、アナリスト・コンサルタントが600万〜900万円、シニアコンサルタントが900万〜1,400万円、マネージャーが1,400万〜2,000万円、シニアマネージャー・ディレクターが2,000万〜3,000万円、パートナー・MDが3,000万円以上です。ファームや個人の成果によって変動します。また、Morgan McKinleyの給与ガイドは、2026年に最も給与の上昇が見込まれるのはDX・IT変革領域としています。
まとめ
- 国内コンサル市場は拡大を続けており、2025年の約8,822億円から2030年には約1兆4,064億円へ成長する予測です。
- 求人は6,400件超と高水準で、採用は専門性重視に進んでおり、専門性を磨く人にとって追い風の市場です。
- 生成AIでコンサルの仕事は消えず、戦略立案から実行・伴走支援、AI活用支援へと価値の出し方が変わっています。
- コンサル業界の理解は、ファームへの挑戦、事業会社での活躍、時期を見た備えという3つの選択肢を広げます。
- 経歴の棚卸し、専門性の選択、情報収集の3つは、今すぐ転職しない人でも今日から始められます。
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参考URL
- 2030年に1兆4,000億円超へ:AIが変える国内ビジネスコンサルティング市場の成長構造(2026年6月18日)(IDC Japan)
- 統計メールニュース1836(労働力調査(詳細集計)2025年10~12月期平均)(2026年2月13日)(総務省統計局)
- 労働のようす(労働力調査(詳細集計)2025年の結果)(総務省統計局「明日への統計2026」)
- 「AI時代の転職・キャリアに関する実態調査」(2026年6月3日掲載)(Sansan株式会社(日本の人事部掲載))
- 【2026年最新】コンサルティングファーム転職求人市場を徹底分析(KOTORA JOURNAL(コトラ))
- 生成AIの導入と若手雇用に関するレポート(2026年10月14日)(大和総研)
- 2026年コンサル業界予測(インタビュー・アンケート)(ONE CAREER PLUS)
- AIが基礎的な仕事を奪った結果…若手に「難しい仕事」だけが残される深刻な危機(ビジネス+IT)
- コンサルティングの平均年収(日本市場)(Morgan McKinley 給与ガイド)
- 転職者がいる事業所の割合 令和7年は2%(厚生労働省「転職者実態調査」の紹介記事)(psrn.jp)
監修者
bloom株式会社 代表取締役 林 栄吾
慶應義塾大学を卒業後、株式会社ベイカレント・コンサルティングに入社。事業戦略の策定・実行支援を中心としたコンサルティング業務に従事。
同社ではアカウントセールスマネージャーとして新規顧客開拓、メンバー育成を担う傍ら、採用責任者・人事責任者を歴任し、戦略コンサルティングと人事・採用の両面で豊富な実績を持つ。
独立後はbloom株式会社を設立。代表取締役として、コンサルティングと人事で培った知見を基に、不動産業および人材紹介業を統括している。