サマリー
- 2025年の上場企業の個人情報漏えいは180件・3,063万人分。情報漏洩対策は経営の最重要テーマとなり、セキュリティコンサルへの期待がかつてなく高まっています。
- ランサム被害の感染経路はVPN機器が最多です。現場の運用を知るITエンジニアの経験が、そのまま提案の説得力になります。
- 2026年度下期の運用開始が予定されるSCS評価制度が追い風となり、制度対応や取引先対応を支援するコンサルの活躍の場はさらに広がる見通しです。
- 評価されるのは、リスクアセスメント、制度・フレームワーク理解、インシデント対応知見、クラウド・ID管理の技術力、経営層への提案力の5つ。どれも今の経験から伸ばせます。
- 求人例には、セキュリティ未経験可で年収800万〜2,000万円と提示されたものもあります。経験を「リスクと経営の言葉」で語れれば、道は大きく開けます。
インフラやアプリケーションの開発・運用で積み上げてきた経験は、いま社会がもっとも必要としているスキルの土台です。大手企業の情報漏洩が連日のように報じられるなか、脆弱性対応やログ調査に向き合ってきたあなたの現場経験は、セキュリティコンサルタントとして大きな価値を持ちます。
「コンサルは資料作成が中心で、技術を活かせないのでは」「セキュリティ専業でなくても挑戦できるの?」と迷う方もいるでしょう。ご安心ください。必要なのはゼロからの学び直しではなく、既存の技術経験を「リスクと経営の言葉」に翻訳する力で、これは意識して練習すれば身につけられます。本記事では、情報漏洩の最新データと制度動向から追い風の正体を整理し、ITエンジニアが即戦力として評価される5つのスキルと、転職に向けた準備の進め方を解説します。
🔗ITコンサルの年収相場は?年齢・役職別の給与体系と年収1,000万円突破の条件
情報漏洩対策はなぜ「経営の最重要テーマ」になったのか?
結論から言うと、情報漏洩は一度起きれば事業停止・信用失墜・損害賠償に直結するため、経営そのものを左右するテーマになったからです。かつては情報システム部門が担う領域でしたが、今は取締役会や取引先から「どこまで対策できているのか」を問われる時代です。それだけ、専門家への期待が高まっています。
IPA(情報処理推進機構)が2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織向け1位は、11年連続の選出となるランサム攻撃による被害でした。2位はサプライチェーンや委託先を狙った攻撃で、3位には「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めてランクインしています。守るべき範囲が広がるほど、全体を見渡せる人材の出番も増えていきます。
企業が求めているのは、製品を売り込む人ではなく、「何から手を付けるべきか」「どこまでやれば十分か」を中立的な立場で示せる専門家です。これがセキュリティコンサルタントの役割であり、技術の裏付けを持つITエンジニア出身者が活躍しやすい理由でもあります。
2025年の個人情報漏えいは3,063万人分。数字で見る現状
東京商工リサーチの調査によると、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は180件で、前年比4.7%減でした。ところが漏えいした個人情報は3,063万6,910人分と、前年から93.1%も増えています。100万人以上の大型事故が6件発生したことが影響しており、一度の事故の影響の大きさが、対策への投資を後押ししています。
原因別では、ウイルス感染・不正アクセスが116件(64.4%)で最多でした。続いて誤表示・誤送信が37件(20.5%)、紛失・誤廃棄が18件(10.0%)、悪意ある従業員による不正持ち出し・盗難が7件(3.8%)です。人為的ミスと内部不正を合わせると全体の3割を超え、技術だけでなく運用や教育まで含めた総合的な設計が求められています。
技術的な防御と、運用ルール・教育・組織体制の両面を描ける人材は、まだ多くありません。だからこそ、実務経験のあるITエンジニアが一歩踏み出す価値は大きいのです。
セキュリティ人材は約17万人不足?広がる活躍のフィールド
サイバーセキュリティ人材の不足は慢性的に続いており、笹川平和財団のセミナー案内では、民間の調査として需要に対し約17万人が不足していると指摘されています。同じ資料によると、中小企業では従業員へのセキュリティ教育を「実施していない」と答えた割合が6割近くあり、支援を必要とする企業がまだまだ数多く存在しています。
供給側の指標として、国家資格「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」の登録者数を見てみましょう。IPAの発表では、2026年4月1日時点の登録者総数は26,453名、同日付の新規登録は1,859名でした。攻撃の増加や制度対応のニーズを考えると、専門人材の供給はまだ十分とは言えず、新しく参入する人が活躍できる余地は大きいと言えます。
なかでも期待されるのは、技術を理解したうえで企業の意思決定を支援できる人材です。実務経験を持つITエンジニアは、この需要に正面から応えられる候補者です。
ランサム被害226件、感染経路の約3分の2はVPN機器。あなたの経験が活きる理由
警察庁の「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、2025年に企業・団体から警察へ報告されたランサムウェア被害は226件でした。被害企業の規模別では中小企業が143件で約6割、業種別では製造業が91件で最多です。復旧費用が1,000万円以上と答えた被害組織も5割を超えており、事前の備えへの需要は確実に高まっています。
警察白書では、感染経路の有効回答92件のうちVPN機器が61件(66.3%)、リモートデスクトップが19件(20.7%)と報告されています。2025年9月には大手飲料メーカーで受注・出荷が停止し、約191万件の個人情報が漏えいまたはそのおそれがあると公表されました。10月には大手通販会社でも約74万件の漏えいのおそれが公表されています。
ここで注目したいのは、侵入口の多くが高度な未知の攻撃ではなく、VPN機器の管理やリモート接続の設定といった運用面にあることです。パッチ適用、アカウント管理、ログ監視は、ITエンジニアが日々向き合ってきた領域ではないでしょうか。原因と対策の勘所を実体験として知っていることが、コンサルタントとしての大きな強みになります。
2026年度下期開始予定のSCS評価制度は、転職の追い風になる?
もう一つの追い風が、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が主導する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」です。サプライチェーン内の各組織に必要な対策を示し、その実施状況を可視化する仕組みで、対策の成熟度を★3〜★5の等級で評価します。2026年度下期の運用開始が予定されています。
発注企業が取引先に一定の評価レベルを求めるケースが増えると見込まれており、すでに複数のベンダーが制度に対応したアセスメントサービスを発表しています。たとえば、キヤノンITソリューションズは2026年4月、NRIセキュアテクノロジーズは同年6月30日に提供を始めました。市場が動き出している証拠です。
現状の対策状況を診断し、目指す等級とのギャップを洗い出し、優先順位をつけた改善ロードマップを描く。これはセキュリティコンサルの典型的な業務です。制度が動き出すほど、中堅・中小企業を含めた支援ニーズが広がり、活躍の場も増えていくでしょう。
ITエンジニアが活躍するために伸ばしたい3つのポイント
技術の土台があることは、それだけで大きなアドバンテージです。そのうえで、エンジニアとコンサルでは価値の出し方が少し異なるため、次の3つを意識して伸ばしていくと、スムーズに力を発揮できます。いずれも経験を重ねながら着実に身につけられるポイントです。
ポイント1:「正しさ」に加えて「優先順位」を示す
エンジニアは技術的に正しい対策を追求するのが得意です。コンサルではそこに、予算・人員・期限を踏まえて「まず何をやるか、何をやらないか」を決めて説明する力が加わります。リスクの大きさと費用対効果で整理する習慣をつけると、提案の質が一気に上がります。
ポイント2:「実装」に加えて「合意形成」を磨く
コンサルの成果物は、経営層・事業部門・情報システム部門が動くための提案と合意です。技術的に最適な案を、現場の運用負荷や事業への影響とすり合わせて実行につなげる。この力が磨かれるほど、信頼される存在になれます。
ポイント3:「深さ」に加えて「幅」を広げる
ギークリーの解説では、セキュリティコンサルは戦略や制度設計を担い経営・組織全体を支えるアドバイザー、セキュリティエンジニアは設定・監視・脆弱性対応といった技術実装を担うプレイヤーと整理されています。ネットワーク、クラウド、ID管理に加え、法令対応、ガバナンス、AIの利用リスクまで視野を広げることで、活躍の幅が大きく広がります。

資格はどう活かす?登録セキスペ約2.6万人時代の差別化ポイント
資格は知識の証明として心強い味方ですが、さらに差をつけるには実績との組み合わせが効果的です。登録セキスペの登録者は2026年4月1日時点で26,453名、平均年齢は44.3歳です。勤務先の業種別では、情報処理・提供サービス業が36.2%、ソフトウェア業が22.7%と、IT業界に集中しています。
選考で評価されるのは、「何を経験し、どんな判断をして、どんな結果を出したか」という実績です。インシデント対応の経験、監査・認証対応、クラウド環境のセキュリティ設計といった具体例を資格と組み合わせて語れば、あなたならではの強みとして伝わります。
セキュリティコンサルで買われる即戦力スキル5選
ここからは、ITエンジニアの経験を活かして評価されやすい5つのスキルを紹介します。いずれも、現職での経験を「言い換える」ことで、すぐにアピール材料になります。
スキル1:リスクアセスメント力
守るべき情報資産を洗い出し、脅威と脆弱性を整理して、リスクの大きさに応じた優先順位を付ける力です。システムの構成や運用実態を知るエンジニアは、机上の想定ではなく現実的なリスクを見極められます。「この構成ならここが狙われる」と説明できる経験は、強力な武器です。
スキル2:制度・フレームワークの理解力
NIST CSF、ISO/IEC 27001、経済産業省のサイバーセキュリティ経営ガイドライン、そして前述のSCS評価制度など、対策の「ものさし」を理解していると、クライアントに現在地とゴールを示せます。監査対応や認証取得に関わった経験があれば、そのまま強みとして活かせます。
スキル3:インシデント対応・復旧の実務知見
障害対応や、侵害の疑いがあるときの調査・封じ込め・復旧の経験は、コンサルの現場でも高く評価されます。ランサム被害で復旧費用が高額になる事例が多いなか、復旧手順やバックアップ設計、BCPを整える支援へのニーズは大きく、経験者の知見が頼りにされます。
スキル4:クラウド・ネットワーク・ID管理の技術的な深さ
VPN機器やリモートアクセスが主要な侵入口となっている現状では、ネットワーク構成、クラウドのアクセス制御、IDとアカウントの管理に精通していることが大きな価値になります。ゼロトラストや多要素認証の導入支援など、技術に裏付けられた提案ができるコンサルは、クライアントから厚い信頼を得られます。
スキル5:経営層に伝える構造化・提案力
最後に、もっとも差がつくのが伝える力です。「脆弱性が見つかりました」ではなく、「この対策に○○の投資をすれば、事業停止リスクをここまで下げられます」と語る。技術用語を使わず、経営の意思決定に必要な情報へ翻訳する練習は、今の仕事のなかからすぐに始められます。
転職前にやるべき準備ロードマップ
準備は大きく4つに分けて進めるのがおすすめです。小さな一歩から始めてみましょう。
- 経験の棚卸し:脆弱性対応、権限設計、ログ設計、障害・インシデント対応などを「課題→判断→結果」の形で整理します。
- 知識の補強:フレームワークや制度の基本を学び、必要に応じて情報処理安全確保支援士などの資格取得にチャレンジします。
- 職務経歴書の書き換え:「何を作ったか」中心の記載から、「どんなリスクをどう下げたか」中心の記載へ変更します。
- 志向するポジションの明確化:戦略・ガバナンス寄りか、診断・技術寄りか、総合系・Big4系・専門ファームのどれが合うかを整理します。
とくに4つ目は、入社後のミスマッチを防ぎ、面接で一貫したストーリーを語るうえで効果的です。自分の強みがどちらに近いかを整理するだけで、目指す方向がぐっとクリアになります。
年収アップも狙える?求人例から見る水準
具体的な水準を、公開されている求人例から確認してみましょう。ビズリーチに掲載されているBig4系ファームのサイバーセキュリティコンサルタント求人では、年収レンジが800万〜2,000万円と提示され、セキュリティ未経験可・製品やサービス開発の経験者歓迎、大学卒業後2〜15年程度の方が対象とされています。経験を活かして挑戦できる門戸が開かれていることがわかります。
別の求人例では、サイバーセキュリティ領域の想定年収が500万〜1,300万円とされ、コンサルタントクラスは社会人経験2年以上、シニアコンサルタントクラスは5年以上が目安です。経験を積み、クラスを上げていくことで、年収の伸びしろも期待できます。
なお、求人内容は時期やファームによって変わり、実際の年収は経験や等級、評価によって決まります。あくまで目安として捉え、気になるファームについては個別に確認することをおすすめします。
Q&A
セキュリティコンサルタントとセキュリティエンジニアの違いは?
結論として、目的と立ち位置が違います。セキュリティコンサルタントは、リスクを分析して戦略や制度、運用体制を設計し、経営層や組織全体を支援します。セキュリティエンジニアは、防御システムの構築や設定、監視、脆弱性対応といった技術実装を担います。エンジニア経験は、コンサルタントになってからも提案の根拠として大いに活きます。
セキュリティ未経験でもセキュリティコンサルに転職できる?
挑戦できる可能性は十分にあります。実際に、セキュリティ未経験可を明記しつつ、製品やサービス開発の経験者を歓迎する求人も出ています。大切なのは、インフラ・開発・運用で培った経験を、リスクや事業影響の観点で説明できることです。準備を丁寧に進めるほど、チャンスはぐっと広がります。
資格は必須ですか?
必須ではありませんが、持っていると知識の裏付けになり、自信にもつながります。情報処理安全確保支援士のような国家資格は、体系的な知識を示す手段として有効です。選考では実務経験や課題解決の実績、説明力も重視されるため、資格と実績をセットでアピールするのが効果的です。
まとめ
- 2025年の個人情報漏えいは3,063万人分に達し、情報漏洩対策は経営の最重要テーマになりました。専門人材への期待は高まる一方です。
- ランサム被害の感染経路はVPN機器が最多で、侵入口の多くは運用面にあります。実務経験を持つITエンジニアは、現場の勘所を知る強みがあります。
- SCS評価制度の運用開始が予定されており、現状診断やギャップ分析、改善計画の支援ニーズはさらに広がる見通しです。
- 即戦力スキルは、リスクアセスメント、制度・フレームワーク理解、インシデント対応知見、クラウド・ID管理の技術力、経営層への提案力の5つです。
- まずは経験の棚卸しと職務経歴書の書き換えから始めましょう。求人例では未経験可で高い年収レンジが示されたものもあり、一歩踏み出せば、キャリアの選択肢は大きく広がります。
コンサル業界へのキャリアチェンジを検討されている方は、コンサルティングファーム特化転職エージェントのbloom株式会社 にお問い合わせください。
・ITや戦略、業務設計などの経験を活かしたい方
・キャリアアップ・年収アップを目指したい方
・未経験だけど思考力・成長意欲で勝負したい方
以下より完全無料相談のお問い合わせが可能です。
参考URL
- 2025年の個人情報漏えい、被害人数は3,063万人 大型事故多発で前年比93%増【TSR調べ】(Web担当者Forum(東京商工リサーチ調査))
- 2025年のランサムウェア攻撃で最も被害が多かった業種は?復旧費「1,000万円以上」が5割超【警察庁サイバー警察局調べ】(Web担当者Forum(警察庁調査))
- 令和8年警察白書 第1部特集「深刻化するサイバー空間の脅威と警察の新たなる展開」に関する解説(ROCKET BOYS(警察白書))
- プレス発表「情報セキュリティ10大脅威 2026」を決定(独立行政法人情報処理推進機構(IPA))
- 情報処理安全確保支援士登録者について(2026年4月1日時点)(独立行政法人情報処理推進機構(IPA))
- 経済産業省「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」とは?(トレンドマイクロ セキュリティトレンド)
- NRIセキュア、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」向けアセスメントを提供開始(IT Leaders(インプレス))
- セキュリティコンサルタントとは|仕事内容と3つの主要業務(Geekly(ギークリー))
- サイバーセキュリティセミナー2025 経済安全保障時代のサイバーセキュリティ人材の育成(アンテロープ/笹川平和財団):
監修者
bloom株式会社 代表取締役 林 栄吾
慶應義塾大学を卒業後、株式会社ベイカレント・コンサルティングに入社。事業戦略の策定・実行支援を中心としたコンサルティング業務に従事。
同社ではアカウントセールスマネージャーとして新規顧客開拓、メンバー育成を担う傍ら、採用責任者・人事責任者を歴任し、戦略コンサルティングと人事・採用の両面で豊富な実績を持つ。
独立後はbloom株式会社を設立。代表取締役として、コンサルティングと人事で培った知見を基に、不動産業および人材紹介業を統括している。