【未経験・若手向け】PM・仲介からAMへ。2026年に向けた「キャリアの壁」の越え方

サマリー

プロパティマネジメント(PM)や不動産仲介業に従事する若手・未経験層が、不動産アセットマネジメント(AM)職へとキャリアアップするための包括的な戦略ガイドです。2024年から2025年にかけての市場動向を基盤とし、2026年以降の「金利ある世界」における不動産投資市場を見据えたキャリア形成論を展開します。

2026年の不動産市場は、世界的な回復基調と資金流入が予測される一方で、金利上昇による調達コストの増加や建築費高騰、そして厳格化するESG(環境・社会・ガバナンス)規制により、高度な運用能力が問われるフェーズへと移行します。これまでのキャピタルゲイン(売却益)依存型から、インカムゲイン(運用益)の最大化とバリューアップ(価値向上)を重視する戦略への転換は、現場の実務を知るPMや仲介経験者にとって、その知見を「投資判断」へと昇華させる絶好の機会となります。

本稿では、PM・仲介それぞれの職種が直面する「思考の壁」の本質を解き明かし、実務で求められるファイナンス・法務知識、ARESマスターなどの資格取得の有効性、そして選考を突破するための具体的な職務経歴書・面接対策までを網羅的に解説します。単なる転職ノウハウにとどまらず、投資家視点を持つプロフェッショナルなアセットマネージャーとして活躍するためのマインドセット変革を促すことを目的としています。

🔗不動産アセットマネジメント業界の転職【未経験・ポテンシャル特化】「PMからAMへ」のステップアップ


2026年の不動産アセットマネジメント市場を取り巻くマクロ環境

アセットマネジメント(AM)への転身を目指す上で、まず理解しなければならないのは、採用の主体である「投資家」や「ファンド」が置かれている経済環境です。市場が拡大局面にあるのか、調整局面にあるのかによって、求められる人材の質は大きく変化します。2026年に向けて不動産投資市場がどのような変遷を辿り、そこでAMがいかなる役割を期待されているのかを詳細に分析します。

1 「金利ある世界」への適応と市場の回復

2024年以降、日本の不動産市場は歴史的な転換点を迎えています。長らく続いた異次元緩和の修正観測、地価の上昇、そして建築コストの高騰といった複合的な要因が、投資判断の難易度を高めています。

市場の底堅さと資金流入の継続

2026年の不動産市場は、世界的な視点で見ても回復局面が続くと予測されています。PGIMリアルエステートの分析によれば、不動産市場は底打ちから緩やかな成長軌道に乗り、特に日本市場においては、安定したキャッシュフローと法制度の透明性を求める国内外の投資家からの資金流入が継続する見込みです。地価は全用途において4年連続で上昇しており、都市部での再開発プロジェクトも活況を呈しています。これは、AM業界における採用意欲が底堅く推移することを示唆しています。

イールドギャップの縮小と「アクティブ運用」への回帰

しかし、楽観視はできません。金利上昇は、不動産投資の最も基本的な指標の一つである「イールドギャップ(投資利回りと借入金利の差)」を縮小させます。借入金利(デットコスト)の上昇は、レバレッジ効果(借入を活用して自己資本利益率を高める効果)を低下させるため、単に「相場に乗って物件を買い、保有しているだけで値上がりする」というパッシブな運用では、投資家が求めるリターンを確保することが困難になります。

この環境下で求められるのは、金利上昇分を吸収できるだけの賃料増額(レントハイク)や、徹底したコスト管理によるNOI(純収益)の向上を実現する「アクティブな運用力」です。2026年に向けては、金融工学的な知識だけでなく、泥臭い現場交渉や工事管理を通じて収益を捻出できる、実務に精通したAMの需要が急増すると予測されます。

2 アセットタイプ別のトレンドとAMへの要求事項

AMとしてキャリアを築く際、どのアセットタイプ(用途)を専門とするか、あるいはどの分野に強みを持つファンドを目指すかは、キャリアパスを左右する重要な要素です。2026年の市場環境において、各アセットクラスで求められる戦略は以下のように分化します。

3 ESG:環境価値が経済価値に直結する時代

かつてCSR(企業の社会的責任)の一環と捉えられていたESG(環境・社会・ガバナンス)は、いまや不動産の資産価値を決定づける財務的要因となっています。

ブラウン・ディスカウントとグリーン・プレミアム

2026年には、建築物省エネ法の規制強化や、グローバル企業によるサプライチェーン全体の脱炭素化要求がさらに強まります。環境性能の低い不動産は、テナントから敬遠され、売却時に価格が割り引かれる「ブラウン・ディスカウント」のリスクに晒されます。逆に、高い環境性能を持つ物件は、高い賃料設定や有利な条件での売却が可能な「グリーン・プレミアム」を享受できます。

実務への影響

これにより、AM担当者の業務範囲は劇的に拡大しています。

  • 環境認証の取得: CASBEE、LEED、GRESBといった認証取得の推進。
  • 省エネ改修の実行: LED化、高効率空調への更新、断熱性能向上工事の投資対効果分析。
  • グリーンリース契約: テナントと協働して省エネに取り組み、光熱費削減メリットを共有する契約条項の締結。

これらの業務は、建物の設備スペックや工事実務に詳しいPM出身者が、その専門性を「投資価値」という文脈で語り直すことで、大きな強みを発揮できる領域です。


アセットマネジメント(AM)の業務解像度を高める

「AMになりたい」という漠然とした憧れだけでは、採用面接を突破することは不可能です。AMの業務フローを具体的に理解し、それが自身の現在の業務とどのように接続しているか、あるいは乖離しているかを言語化する必要があります。ここでは、AM業務の全体像と、PMとの決定的な違いについて解説します。

1 AM業務のライフサイクル:3つのフェーズ

不動産AMの業務は、物件のライフサイクルに合わせて大きく3つのフェーズに分類されます。それぞれのフェーズで求められるスキルセットや関係するプレイヤーが異なります。

① 取得(アクイジション / ソーシング)

投資家から預かった資金(Equity)と金融機関からの借入(Debt)を使って、投資基準に合致する物件を探し出し、購入するフェーズです。AM業務の入り口であり、投資の成否の大部分はこの段階で決まると言っても過言ではありません。

  • 主要業務:
  • ソーシング: 仲介会社や信託銀行等のルートを通じた物件情報の収集。
  • アンダーライティング: レントロール(賃貸借状況)やエンジニアリングレポート(ER)を精査し、将来の収益予測(キャッシュフロー)を作成して購入価格を算出する。
  • デューデリジェンス(DD): 法的・物理的・経済的な側面からの資産精査。
  • クロージング: 売買契約の締結、決済、引渡し。
  • 求められる力: 情報収集力、相場観、交渉力、瞬時の判断力。仲介経験者が最も親和性の高い領域です。

② 運用(期中管理 / アセットプランニング)

取得した物件を保有している期間中に、収益を最大化するための戦略を実行するフェーズです。PM会社への指示出し(指図)を通じて、間接的に建物を管理します。

  • 主要業務:
  • 運用計画(Budgeting)の策定: 年間の収支予算を作成し、投資家の承認を得る。
  • リーシング戦略: 空室を埋めるための条件設定や仲介会社へのインセンティブ設計。
  • 工事管理(CAPEX): 大規模修繕やバリューアップ工事の立案・実行。
  • レポーティング: 投資家に対し、月次・四半期・年次で運用状況を報告する。
  • 求められる力: 計数管理能力、関係者調整力、建築・設備の知識、テナント対応の勘所。PM経験者の知見が直接活きる領域です。

③ 売却(ディスポジション / イグジット)

運用した物件を市場で売却し、投資利益を確定させるフェーズです。ファンドの満期や市場環境を見極めて実行します。

  • 主要業務:
  • 売却戦略の立案: 入札方式か相対取引か、どの仲介会社を使うかの選定。
  • データルームの構築: 買主候補によるDDへの対応。
  • 価格交渉・契約: 最終的なリターンの最大化。
  • 求められる力: 出口戦略の構築力、タイミングを見極める市場分析力。

2 「プロパティマネジメント(PM)」と「アセットマネジメント(AM)」の決定的な違い

PMとAMは密接に連携するパートナーですが、その「視座(パースペクティブ)」と「責任範囲」には明確な違いがあります。転職において最も重要なのは、この視座の転換ができるかどうかに尽きます。

マインドセットの転換

PM出身者が陥りやすい罠は、「コスト削減」こそが正義だと思い込んでいることです。AMにおいては、「1,000万円の工事をして、年間100万円の賃料アップを実現する」という判断が正解となる場合があります(この場合、表面利回りが4%の市場であれば、資産価値は2,500万円向上することになり、工事費を差し引いても1,500万円の価値創出となります)。

「建物が綺麗になるから修繕する」ではなく、「NOIが向上し、投資利回りが改善するから修繕する」というファイナンスのロジックで現場の事象を語れるかが、キャリアの壁を越える鍵となります。


【職種別戦略】PMからAMへ ~現場力を投資判断力へ昇華させる~

PM経験者は、実際の建物管理、テナント対応、クレーム処理といった「現場のリアリティ」という強力な武器を持っています。しかし、採用面接では「管理思考」から抜け出せていないと判断されることが多くあります。ここでは、PM経験者がその強みを活かしつつ、AMに必要な思考法を身につける戦略を詳述します。

1 PM経験者が活かせる「具体的強み」

  1. 精度の高いコスト感覚(OpEx/CapEx):
    AM未経験者が作成する収支計画(アンダーライティング)は、修繕費や運営コスト(OpEx)の見積もりが甘く、実際の運用段階で予算超過を起こすリスクがあります。PM経験者は、「エレベーターのフルメンテナンス契約はいくらが相場か」「大規模修繕工事の足場代はどれくらいかかるか」といった肌感覚を持っているため、非常に精度の高い(ダウンサイドリスクを織り込んだ)予算策定が可能です。
  2. テナントリレーションとリーシング支援:
    テナントが退去する兆候(予兆)や、逆に入居を決定づける要因(決め手)を現場で体感しています。これは、空室リスクを最小化するリテンション(引き留め)戦略や、市場ニーズに合致したリーシング条件の設計に直結します。
  3. 物理的リスクの察知能力(エンジニアリング視点):
    デューデリジェンスの際、書類上は問題なくても、現地の状況(外壁のクラック、配管の異音、管理人の質など)から潜在的なリスクを察知できます。これは投資家の資産を守る上で極めて重要な能力です。

2 乗り越えるべき「壁」と具体的対策

課題:受動的な管理から、能動的な提案へ

PM業務は「起きた問題に対処する」ことが多くなりがちですが、AMは「将来の価値を創るために今動く」必要があります。

対策:職務経歴書での「実績」の書き換え

職務経歴書では、単なる管理棟数や業務内容の羅列ではなく、「自らの提案によって収益構造を変えた事例」を記載する必要があります。

  • Before(PM的記述):「築20年のオフィスビルにおいて、空調設備の更新工事を管理しました。工事業者と調整し、工期通りに完遂しました。」
  • After(AM的記述):「築20年のオフィスビルにおける空調更新にあたり、省エネ性能の高い機種を選定することで電気代を年間20%削減。これによりNOIを向上させ、削減分の一部を共益費改定として交渉し、実質的な賃料増額に成功しました。また、工事期間中のテナント調整を主導し、クレームゼロで完遂しました。」

対策:バリューアップ(Value Add)の引き出しを持つ

オフィスのNOIを改善するための具体的なアイデアを面接で語れるように準備します。

  • 事例: セキュリティ機能の強化(ICカード導入)により、セキュリティ意識の高い外資系テナントの誘致を可能にする。
  • 事例: 共用部にウェブ会議用ブースやリフレッシュスペースを新設し、近隣競合物件との差別化を図り、坪単価を数千円アップさせる。
  • 事例: 照明のLED化工事において、単なる交換ではなく、照度設計を見直して執務環境を改善しつつ、補助金を活用してイニシャルコストを抑える提案。

【職種別戦略】仲介からAMへ ~成約力を持続的な運用力へ~

売買仲介(ブローカレッジ)や賃貸仲介(リーシング)の経験者は、市場の最前線で培った「相場観」と「交渉力(クロージング力)」が最大の武器です。一方で、契約後の「運用・管理」や「中長期的な資産価値維持」の視点が希薄であると見なされがちです。

1 仲介経験者が活かせる「具体的強み」

  1. 圧倒的なソーシング(物件発掘)能力:
    AMの仕事は「良い物件を買うこと」から始まります。仲介営業で培った独自の業者ネットワーク、未公開情報の収集ルート、オーナーへの直接アプローチ(直あて)のスキルは、アクイジション(取得)担当として即戦力の評価を得られます。特に、競合他社が群がる入札案件ではなく、相対取引(相対)で案件を持ち込める能力は高く評価されます。
  2. マーケット分析と価格査定力:
    「このエリアのこのスペックなら、坪単価いくらで決まるか」というリアルタイムの成約事例に基づいた相場観は、レントロールの妥当性を検証する上で不可欠です。鑑定評価書の理論価格と実勢価格の乖離を肌感覚で補正できる能力は強みです。
  3. 利害調整とクロージング力:
    売主、買主、仲介業者、金融機関など、複雑に絡み合う利害関係者の意見を調整し、契約というゴールまで案件を推進するプロジェクトマネジメント能力は、AM業務のあらゆる場面で応用可能です。

2 乗り越えるべき「壁」と具体的対策

課題:フロー(短期)からストック(中長期)への時間軸の変化

仲介は「契約=ゴール」ですが、AMにとって契約は「スタート」です。その後の5年、10年という保有期間中のリスクを想像できるかが問われます。

対策:「出口(Exit)」を見据えたストーリーテリング

面接や職務経歴書では、単に「いくらで売ったか」だけでなく、「なぜその価格で売れたのか」「購入者はその後どう運用する想定だったのか」まで踏み込んで語る必要があります。

  • キーワード:アップサイド・ポテンシャル(Upside Potential)
    現状の賃料(Current Rent)と市場賃料(Market Rent)にギャップ(Rent Gap)がある物件を見つけ出し、テナント入れ替えやリノベーションによって収益を向上させるシナリオを描けることをアピールします。
  • アピール例:「仲介業務において、単に物件を紹介するだけでなく、購入検討者に対して『1階店舗部分を分割してリーシングすることで賃料単価を上げ、利回りを改善するプラン』を提案し、成約に繋げました。」

対策:ドキュメンテーション能力の向上

仲介営業は口頭でのコミュニケーションが主体になりがちですが、AMは投資家向けの投資委員会資料(投委資料)など、膨大なドキュメント作成が求められます。論理的でミスのない資料作成能力、Excelでのシミュレーション能力を独学でも習得している姿勢を示すことが重要です。


AMへの転職における「必須スキル」と「資格」の真実

未経験者がAMへの扉を開くためには、ポテンシャル採用の枠を勝ち取る必要があります。その際、熱意を裏付ける客観的な証拠として「スキル」と「資格」が機能します。

1 求められる3つのコアスキル

転職市場のデータに基づくと、AMには以下の3つの能力が不可欠とされています。

  1. 数値分析スキル(計数感覚・ファイナンスリテラシー):
    不動産投資はすべて数字に帰結します。
  • 必須用語: NOI(純収益)、NCF(正味キャッシュフロー)、Cap Rate(還元利回り)、IRR(内部収益率)、LTV(借入金比率)、DSCR(借入金償還余裕率)。これらの言葉の意味を理解し、相互の関係性を説明できる必要があります。
  • Excelスキル: 実務では複雑なキャッシュフローモデルを扱います。VLOOKUP、SUMIFS、INDEX/MATCH、ピボットテーブルなどの関数・機能は最低限マスターし、NPVやXIRR関数を用いた投資分析の基礎を学習しておくことが強く推奨されます。
  1. 論理的思考力と説明責任(アカウンタビリティ):
    投資家の資金を預かる以上、「なぜその物件を買うのか」「なぜその工事が必要なのか」を論理的に説明し、承認を得るプロセス(稟議)が日常的に発生します。感覚的な「良さそう」ではなく、データとロジックに基づいた説得力が求められます。
  2. コミュニケーション能力とリーダーシップ:
    AMはプロジェクトの司令塔です。PM会社、BM会社、工事会社、弁護士、会計士、税理士、レンダー(金融機関)、信託銀行など、多岐にわたる専門家を巻き込み、プロジェクトを推進する力(推進力)が求められます。

2 資格は「最強のパスポート」になり得るか?

未経験者にとって、資格取得は知識レベルと学習意欲を証明する最も有効な手段です。

  • 宅地建物取引士(宅建):
    不動産業界の基礎パスポートです。AM会社でも宅建業者としての登録を行っている場合が多く、重要事項説明書の確認などで実務上も必須となります。持っていない場合は、最優先で取得すべきです。
  • 不動産証券化協会認定マスター(ARESマスター):
    AM業界への転職において、最も強力な武器となり、かつ実務に直結する資格です。
  • 評価される理由: 不動産実務だけでなく、ファイナンス、法務(倒産隔離スキーム等)、会計、税務、バリュエーション(DCF法)を体系的に網羅しており、この資格を持っていることで「AMとしての共通言語」が通じると判断されます。「証券化マスターを持っているだけで、書類選考の通過率が跳ね上がる」「未経験採用の必須条件」とする企業も少なくありません。
  • 学習内容: J-REITや私募ファンドの仕組み、GK-TKスキーム、TMKスキームなどのストラクチャー理解。
  • 難易度: 合格率は約30-40%程度ですが、試験範囲が広く、計算問題も多いため、半年程度の計画的な学習が必要です。二次試験では実務的なレポート作成やExcel計算も問われます。
  • その他の推奨資格:
  • 不動産コンサルティングマスター: 実務経験(5年など)が必要ですが、提案力を証明できます。
  • 日商簿記2級: 決算書の理解、SPV(特別目的会社)の会計処理を理解する上で役立ちます。
  • TOEIC (700〜800点以上): 外資系ファンドや、海外投資家(外資系LP)の資金を運用する国内ファンドを目指す場合は必須級の加点要素です。

2026年を見据えた選考対策 ~書類・面接の実践テクニック~

スキルや資格を身につけたら、それを効果的に伝えるためのアウトプット準備に入ります。採用担当者の視点に立った戦略的な対策が必要です。

1 職務経歴書の「見せ方」を変える(翻訳作業)

PMや仲介の経歴書をそのままAMの応募に使ってはいけません。AMの採用担当者が見ているポイント(=投資家視点を持っているか)に合わせて、自身の経験を「翻訳」する必要があります。

  • ポイント① 定量成果(数字)を徹底的に入れる:
    「多くの物件を管理しました」という曖昧な表現はNGです。「担当物件数15棟、管理延床面積計20,000坪、平均稼働率を92%から98%へ改善し、年間賃料収入を〇〇百万円増加させた」のように、規模感(Scale)と成果(Impact)を数字で示します。
  • ポイント③ プロジェクト単位(Case Study)で記述する:
    ルーチンワークの羅列ではなく、特定の困難なプロジェクト(例:権利関係が複雑な物件の立ち退き交渉、大規模な用途変更リノベーション)における「課題」「自身のアクション」「結果」をエピソードとして記載します。
  • ポイント③ 「巻き込み力(Stakeholder Management)」を示す:
    社内外の多様な関係者をどのように調整し、合意形成を図ったかを記述します。AMは「調整業務」が大半を占めるため、この能力は高く評価されます。

2 面接で必ず聞かれる質問と「逆質問」の戦略

面接では、志望動機や自己PRに加え、業界特有の質問への準備が必要です。

  • 「なぜAMなのか?(Why AM?)」:
    「上流工程に行きたい」「給料を上げたい」だけでは不十分です。「PMとして建物の詳細を見てきた経験から、修繕計画と資金計画の乖離に課題を感じ、より根本的な資産価値向上の戦略立案(AM)に携わることで、投資家の期待に応える成果を出したい」といった、原体験に基づいた強い動機が必要です。
  • 「あなたの強みはAMでどう活きるか?」:
    前述の「PMの強み」「仲介の強み」を、AMの業務フロー(取得・運用・売却)の具体的な場面に当てはめて説明します。「デューデリジェンスの際、現場の違和感に気づける」「リーシング業者に対して、具体的なターゲット企業のリストアップを指示できる」などです。
  • 「最近気になった不動産ニュースは?」:
    2026年の市場トレンド(金利上昇、建築費高騰、物流施設の供給過多など)について、自分なりの考察を持っているかが試されます。

差がつく「逆質問」

面接の最後にある「何か質問はありますか?」は、単なる質疑応答ではなく、最後のアピールの場(クロージング)です。

  • 「御社が現在注力されているアセットタイプについて、今後の投資戦略(コア寄りなのか、バリューアッド寄りなのか)を可能な範囲でお聞かせいただけますか?」(業界研究の深さとビジネスへの関心を示す)
  • 「未経験から入社された方で、ハイパフォーマンスを出されている方に共通する行動特性やマインドセットはありますか?」(入社後の活躍イメージを持っていることを示す)
  • 「現在ARESマスターを勉強中ですが、入社までに準備しておくべき実務スキル(Excelの特定機能など)はありますか?」(高い学習意欲を示す)

入社後のキャリアパスと将来展望

晴れてAMとしてデビューした後、どのようなキャリアが待っているのでしょうか。AMのキャリアは専門性が高く、市場価値も高いため、多様な選択肢が広がります。

1 スペシャリストか、ゼネラリストか

  • アクイジション(取得)のプロ: 目利き力とネットワークを極め、ファンドの運用資産残高(AUM)拡大を牽引する花形。インセンティブ給与が高くなる傾向があります。
  • アセットマネジメント(期中)のプロ: バリューアップの実績を積み、どんな古い物件でも再生させる「再生請負人」となる。不況期でも安定した需要があり、PM会社や工事会社からの信頼も厚くなります。
  • ファンドマネージャー(FM): 個別の物件(Asset)ではなく、ファンド全体(Portfolio)の戦略を練る、より上位のポジション。資金調達(ファイナンス)、投資家対応(IR)、予実管理など、経営に近い視点が求められます。

2 2026年以降のキャリアの広がり

AMの経験は、不動産金融業界のみならず、以下のような幅広いフィールドで評価されます。

  • 事業会社のCRE(企業不動産)戦略部門: 自社保有不動産の有効活用を企画する。
  • 銀行・信託銀行の不動産部: 融資判断や不動産仲介部門。
  • 外資系コンサルティングファーム: 都市開発や不動産戦略コンサルタント。
  • ESG/サステナビリティ推進: 脱炭素戦略の専門家として、不動産業界全体のグリーン化を主導する。

結論

2026年に向けて、不動産アセットマネジメント業界は「金利ある世界」への回帰と「ESG必須化」という、過去10年とは異なる新たなパラダイムの中にあります。この変化は、高度な専門知識を持たない未経験者にとっては参入障壁が高くなる要因でもありますが、同時に、実物不動産の現場を知り尽くしたPM・仲介経験者が、その知見を「価値創造」という形で発揮できる大きなチャンスでもあります。

「キャリアの壁」は確かに存在します。しかし、それは決して越えられない壁ではありません。

  1. 市場環境の理解(マクロ経済とアセットトレンドを押さえる)
  2. マインドセットの転換(現場視点から投資家視点・ファイナンス思考へ)
  3. 武器の装備(ARESマスター、計数能力、論理的思考)
  4. ストーリーの構築(自身の経験をAMの言語に翻訳する)

この4つのステップを着実に踏むことで、若手・未経験者であっても、不動産ビジネスの最前線であるアセットマネジメントの世界への扉を開くことは十分に可能です。自身のキャリアそのものを一つの「優良なアセット」として戦略的にマネジメントし、長期的な価値向上(キャリアアップ)を目指して、今日から一歩を踏み出してください。

不動産業界に少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
あなたのこれまでの経験の中に、きっと活かせる強みが眠っています。

🔗不動産、金融転職に特化したサポートをしているbloom株式会社では、これまでのご経験をどのように新しいキャリアに繋げられるのか、丁寧にご説明させていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。

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参考URL

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⚫︎監修者

bloom株式会社 最高執行役社長 (COO) 小田村 郷

慶應義塾大学を卒業後、三井不動産リアルティ株式会社に入社し、不動産仲介(リテール・法人)の第一線で実務経験を積む。

その後、トーセイ・アセット・アドバイザーズ株式会社に移籍。不動産ファンドのアセットマネジメント(AM)業務を専門に担当し、投資家サイドの高度な専門知識を習得する。

独立後、bloom株式会社に参画。最高執行役社長として、不動産仲介からアセットマネジメントまで、不動産業界の川上から川下までを熟知したプロフェッショナルとして事業全体を牽引している。