不動産・金融特化転職エージェントが解説!不動産ファンドとは何か?不動産ファンドの基本概念とスキーム|今後の展望

サマリー

本記事では、不動産金融業界への転職を目指す方に向けて、不動産ファンドの仕組みや業務内容をわかりやすく解説します。2025年現在、金利のある世界への移行やESG対応など、市場は大きな転換期を迎えています。GK-TKやTMKといった専門用語(スキーム)の理解から、アセットマネージャー等の具体的な職種、そして業界が求める人材像まで、転職支援の実績豊富な当社ならではの視点で情報を整理しました。


はじめに:成熟する不動産証券化市場とキャリアの可能性

日本の不動産投資市場は、バブル崩壊後の不良債権処理をきっかけに大きく変化しました。かつての「土地神話」に頼った投機的な取引ではなく、収益還元法に基づく論理的な投資市場へと進化を遂げています。特に2000年代初頭のJ-REIT(不動産投資信託)市場の創設以降、不動産を金融商品として扱う「証券化」の仕組みが定着し、現在では数十兆円規模の巨大市場となっています。

当社は不動産・金融領域に特化した転職エージェントとして、数多くのプロフェッショナルのキャリア支援を行ってきました。本記事では、投資家と不動産をつなぐ「不動産ファンド」がいかにして利益を生み出しているのか、その裏側にあるスキームや、2025年の最新トレンドについて解説します。業界トップを目指す方にとって、有益な情報となれば幸いです。

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不動産ファンドの基本概念と証券化の仕組み

1 不動産ファンドとは何か

広義の「不動産ファンド」とは、多数の投資家から出資を募り、その資金で不動産を取得・運用し、得られた賃料収入や売却益を投資家に分配する事業の総称です。

実物の不動産は高額で流動性が低いという特徴がありますが、これを小口化して「金融商品(有価証券等)」に変えることで、多くの投資家が参加できるようになります。これを「不動産証券化」と呼びます。

 

2 重要なキーワード:SPCと倒産隔離

不動産証券化において最も重要なのが、**SPC(Special Purpose Company:特別目的会社)**の存在です。

通常、不動産ファンドでは、運用会社が直接不動産を保有するのではなく、資産保有専用のペーパーカンパニーであるSPCを設立します。これには「倒産隔離」という重要な目的があります。

  • 倒産隔離(Bankruptcy Remoteness):
    元の所有者(オリジネーター)や運用会社が万が一倒産しても、その影響がSPCに及ばないように法的に切り離す仕組みです。これにより、投資家や金融機関は、運用会社の経営リスクではなく、「不動産そのものの価値」だけを見て投資や融資を行うことが可能になります。

 

3 レバレッジ効果とノンリコースローン

不動産ファンドが高い収益(利回り)を上げられる理由の一つに「レバレッジ効果」があります。これは、投資家からの出資金(エクイティ)に加え、金融機関からの借入金(デット)を利用して投資総額を増やす手法です。

この際の融資は、一般的な企業融資とは異なり、**ノンリコースローン(非遡及型融資)**が利用されます。

  • 特徴: 返済の原資は、あくまでSPCが保有する物件から生じるキャッシュフローや売却代金に限定されます。もし返済が滞っても、金融機関はSPCの背後にいるスポンサー企業等に返済を迫ることはできません。
  • 審査のポイント: そのため、金融機関はLTV(借入金比率)やDSCR(元利金返済カバー率)といった指標を用い、物件の収益力を厳密に審査します。


業界標準!主要な不動産ファンドスキーム

日本の実務では、主に以下の3つのスキームが利用されています。それぞれの法的性質や税務メリットを理解することは、業務を行う上で必須です。

1 J-REIT(不動産投資信託)

誰もが知る代表的なスキームで、証券取引所に上場されているため一般の投資家でも売買が可能です。

  • 概要: 「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づく投資法人が主体となります。
  • 特徴: 利益の90%超を配当する等の要件を満たすことで、法人税が実質的に免除される(導管性)メリットがあります。透明性と流動性が非常に高いのが特徴です。

2 GK-TKスキーム(合同会社+匿名組合)

私募ファンド(プライベートファンド)で最も一般的に利用されるスキームです。「GK-TK」という言葉は業界で頻出します。

  • GK(Godo Kaisha): 資産を保有する器として「合同会社」を設立します。
  • TK(Tokumei Kumiai): 投資家はGKと「匿名組合契約」を結び、出資を行います。
  • メリット: 設立コストが安く、手続きが簡便です。TK契約により、パススルー課税(二重課税の回避)と同様の効果が得られ、投資家の匿名性も保たれます。

3 TMKスキーム(特定目的会社)

「資産の流動化に関する法律」に基づくスキームです。

  • TMK(Tokutei Mokuteki Kaisha): 資産流動化計画を金融庁(財務局)に届け出て設立される「特定目的会社」を利用します。
  • 特徴: 規制は厳しいものの、現物不動産を取得する際の登録免許税や不動産取得税が軽減されるという大きなメリットがあります。そのため、大規模なオフィスビルや商業施設の証券化でよく利用されます。

※これらのスキームは、それぞれの関係者(投資家、AM会社、レンダー、信託銀行など)の関係を図に描いて整理すると理解が早まります。面接対策等でも、頭の中で図をイメージできるようにしておきましょう。


 投資戦略とアセットクラス

アセットマネージャー(AM)は、市場環境に合わせて適切な戦略を立案します。

1 リスク・リターンによる分類

  • コア(Core): 都心の一等地のオフィスビルなど、安定した賃料収入(インカムゲイン)を狙う戦略。低リスク・低リターンです。
  • バリューアッド(Value-Add): リノベーションやテナントの入れ替えを行い、物件の価値を高めてから売却する戦略。中リスク・中リターンです。
  • オポチュニスティック(Opportunistic): 開発案件や権利関係の複雑な物件など、高いリスクを取って大きな売却益(キャピタルゲイン)を狙う戦略。高リスク・高リターンです。

 

2 2025年の注目アセットとトレンド

2025年の市場では、従来のアセット(オフィス、住宅)に加え、以下の分野への取り組みが加速しています。

  • データセンター: AIやクラウド需要の爆発的増加により、投資対象として「Top」の注目度を誇ります。
  • 物流施設: 「2024年問題」を経た物流網の再編に伴い、高機能な次世代型倉庫へのニーズが高まっています。
  • ホテル: インバウンド需要の完全回復を受け、ラグジュアリーホテルや宿泊特化型ホテルへの投資が活発です。

転職エージェントが教える!具体的な業務内容と職種

不動産ファンド業界には、専門性の高い職種が多数存在します。

1 アクイジション(投資・取得)

ファンドの入口となる業務です。ソーシング(物件情報の収集)から、アンダーライティング(収支予測)、価格交渉、契約決済までを担当します。

  • 求められるスキル: 不動産価格の目利き力、財務モデリング作成能力、そしてタフな交渉力が必要です。実績がダイレクトに評価される花形職種です。

 

2 アセットマネジメント(期中運用)

取得した物件の価値を最大化する司令塔です。PM(プロパティマネジメント)会社の指揮、修繕計画の策定、リーシング戦略の実行、投資家へのレポーティングを行います。

  • 求められるスキル: 建築・設備の知識や、多数の関係者をまとめるプロジェクト管理能力が重要です。最近では、テナントの満足度を高めつつ賃料を上げる提案力が求められます。

 

3 ストラクチャリング・ファイナンス

最適なスキーム(GK-TKやTMK等)を構築し、金融機関からの融資(デット)を調達する業務です。

  • 求められるスキル: 金融法務や税務の高度な知識が必要です。銀行や証券会社出身者が多く活躍しています。

今後の展望:2025年以降の市場環境

1 「金利ある世界」への対応

長らく続いた低金利時代が終わり、金利上昇局面に入っています。これにより、借入コストが増加し、イールドギャップ(投資利回りと借入金利の差)が縮小する傾向にあります。

これからのアセットマネージャーには、単に市場の波に乗るだけでなく、賃料増額(賃上げ)交渉やコスト削減を通じて、NOI(純収益)をしっかりと向上させる「真の運用力」が問われるようになります。

 

2 ESGとサステナビリティ

環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)への配慮は、もはやオプションではなく必須要件です。環境性能の高い物件(グリーンビルディング)は、テナント誘致や売却価格で有利になる一方、対応が遅れた物件は市場から淘汰されるリスクがあります。既存物件の環境性能を改善する「レトロフィット」の取り組みも急増しています。


終わりに

不動産ファンド業界は、高収入が期待できる一方で、求められる専門知識や実務経験のハードルも高い世界です。しかし、適切な準備と戦略があれば、異業界からの転職も十分に可能です。

  • 「未経験からアクイジション担当になれる?」
  • 「自分のキャリアで通用するアセットマネジメント会社はどこ?」
  • 「最新の求人動向や年収相場を知りたい」

不動産業界に少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
あなたのこれまでの経験の中に、きっと活かせる強みが眠っています。

不動産、金融転職に特化したサポートをしているbloom株式会社では、これまでのご経験をどのように新しいキャリアに繋げられるのか、丁寧にご説明させていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。

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参考URL

不動産証券化とは?

事業スキーム | 事業紹介 | 三井不動産投資顧問

SPC(特別目的会社)とは?メリットは「倒産隔離」 | 不動産投資クラウドファンディング CREAL(クリアル)

不動産STにおける市場規模は堅調に拡大、2025年度は拡大がさらに加速する可能性も

TMK/特定目的会社スキームの仕組みを解説。特定出資と優先出資の違いは?

クイックに理解する「GK-TKスキーム」


⚫︎監修者

bloom株式会社 最高執行役社長 (COO) 小田村 郷

慶應義塾大学を卒業後、三井不動産リアルティ株式会社に入社し、不動産仲介(リテール・法人)の第一線で実務経験を積む。

その後、トーセイ・アセット・アドバイザーズ株式会社に移籍。不動産ファンドのアセットマネジメント(AM)業務を専門に担当し、投資家サイドの高度な専門知識を習得する。

独立後、bloom株式会社に参画。最高執行役社長として、不動産仲介からアセットマネジメントまで、不動産業界の川上から川下までを熟知したプロフェッショナルとして事業全体を牽引している。